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にんじんのBONのレビュー・感想・評価

にんじん(1932年製作の映画)
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フランス古典映画ビッグ5の1人、ジュリアン・デュヴィヴィエがジュール・ルナールの小説を映画化。

当時1932年11月にフランスで公開され、悲痛な主人公を演じたロベール・リナン少年は一夜にしてスターダムにのし上がり、その後も不況の時代に1年以上のロングランヒットを記録した不朽の名作。

ルピック家の末っ子、11歳の少年が母親にいじめにいじめ抜かれ、年の離れた兄や妹は溺愛される、父親は母親と不仲で忙しく中々帰ってこないという不条理な家庭で、惨めな子供時代を送る様を描いた物語。

少年はブロンド頭にもかかわらず、母親は彼を赤毛と言いがかりをつけてにんじん(正しくはPoil de Carotte)とあだ名を付けて罵る。

冒頭から家族に対して絶望している様子や、自殺を考え実行しようとする少年が痛々しく、清らかな心を持った小さな子どもをなじる母親が心底気持ち悪かった。

11歳にしてその消耗してしまった表情に胸が痛み、湖で祈る姿は名シーンだった。

ラストシーンは不幸を共有すること、相手を愛すことを父親と分かち合い、ルピックさんからパパへ、にんじんが死に本来の少年の名前として生きていくという清々しさで胸が熱くなった。

主人公を演じスター子役となったロベール・リナンは、戦時中にレジスタンスに参加し、ゲシュタポに捕まって拷問を受けた後、14人の仲間とともに処刑され、わずか23歳で人生の幕を閉じたらしい…。
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