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ヘルムート・ニュートンと12人の女たちのBONのレビュー・感想・評価

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ピアソラのリベルタンゴが流れるだけで写真がよりカッコよくなってしまい、もうその音に夢中になって全尺聴きに何度も中断してしまった。

被写体自身の私生活やパーソナリティに何の興味もなく、カメラに映る身体と顔にしか興味がないと言い切るヘルムートの写真はハイファッションに女の性とマッチョイズムが曝け出され、ユダヤ人でナチスの脅威から影響を受けたであろう捻りと、悪ガキジジイのウィットに富んだ姿勢が一貫していて、業界に長年君臨する商業写真家のある意味手本のようだと思った。自分と全く違うタイプだと思った。

モデルたちは自分のありのままの魂が写っていたり、自分ではない別人だったり、新しい別の顔を見出したとそれぞれ違う回想をしている。彼にとって写真が被写体の人格を表しカメラを介して現実と距離を置けるイメージを作る装置なのだと思った。映画作りみたい。

イメージを構築する中で写真家の妻ジューンとの私生活を見せた二人の写真展と、ヴォーグ・オムに掲載するトレンチコートの撮影で、鏡の前で自分がコートを着てモデルのヌードにカメラを構え、その横でジューンが待っている3人の姿が写った写真に現実味と真実性を感じた。

歳を重ねたシャーロット・ランプリングの変わらぬ高貴さが良い。
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