りっく

にんじんのりっくのレビュー・感想・評価

にんじん(1932年製作の映画)
4.2
無口なゆえに冷え切った家庭を作った父親にも非があるように見えるが、最終的に母親ひとりに幼い息子の自殺未遂の原因があり、そんな母親は嫌な奴という共通認識により父と息子が連帯する着地は男性目線での物語だという印象は否めないが、それでも約100年前に「毒親と見捨てられた子供」という今となっては不朽の典型が存在し、子供が自殺に至るまでの痛みや悲しみをこれほどまでに生々しく感じさせることに驚いた。

ゆるやかな劇伴が止まり静音になるタイミングや、子供を見つめる周囲の眼差しに込められる想い。自分は不幸せで一人ぼっちだと理解してしまう子供がムチを振り回して馬車が加速する場面や、寝床で自分に自問自答する場面の幼き心が抉らていくかのような痛み。お涙頂戴のメロドラマではなく、乾いたタッチでペシミズム哲学を浮き彫りにするデュヴィヴィエ演出に終始唸らされる。
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