久々に再会した友達に連れられ撮影現場の河に行った主人公。河にうつ伏せで浮くマネキンでは死体のリアルさが出ないと悩む監督から急遽死体役を頼まれ浮くことになる。それから数日後原因不明の首の痛みが現れ首が曲がった状態から戻らなくなる。バラバラな家族はこれを機にどうなっていくのか‥
不思議な作品で好みでした。
ロングショットが多くてセリフも少ない。
でもさりげなく面白いシーンがあったりと見逃せない。
父親が息子の首を真っ直ぐに支えてバイクに乗るシーンや、息子がいるのに通り過ぎる病院の廊下シーンが好き。
天井から漏れる『水』はこの家族が抱える問題のメタファーなのかもしれない。
父親も母親も表面上だけで実際は自分のことばかりで問題と向き合おうとしない。雨漏りを放置するように。
問題があればとりあえず対処はする父親、でも誰にも言えない秘密を持っている。
問題が大きくなってからしか動かず、いつも面倒くさい感じで問題を避けたがる母親、この母親にも秘密がある。
ラスト付近、凄まじい雨漏りの部屋の扉を母親が閉めると同時に父親と息子がいる部屋に場面が切り替わり、秘密がバレた父親が慌てて扉に鍵をかけるシーンが上手い。ここが編集で一瞬繋がっているように見える。
このシーンは場所は違えど問題に対峙するこの淀んだ家族を皮肉っているように見えた。
そう考えると、ラスト付近であの場所のあの部屋に行った主人公と冒頭のシーンが重なって見えてくる。最初の河（水）に浮く主人公は、問題に身を投じた自身の姿であるということか‥
個人的にはラストがもう少し好みだったら更に良かったが、総じてクオリティの高い名作でした。
