1933年のサイレント作品。
ボクシング、ジャズ、ダンスホール、タップダンス…1933年にしてはアメリカナイズされたモチーフの数々。アメリカ映画好きの小津さんの“こんなの撮ってみたい”という気持ちが表れているような和製ギャングで新鮮だった。
日本だとヤクザなんだろうけど、ロングコートにハットのギャングスタイルを取り入れていてスタイリッシュ。
西洋風なルックスの襄二(岡譲司)といかにも和顔な恋人の時子(田中絹代)。最初は田中絹代に違和感があったのだけど、襄二を好きで悪の世界から2人で抜け出そうとする真面目で純粋な時子役に田中絹代はぴったりだと思った。襄二が恋し、時子も心を奪われた和子を演じた水久保澄子の清廉な美しさを対比させるためにも田中絹代はふさわしかったと思う。
白いケトルや時計、毛糸といったモノのショットやローポジの多用など、この頃から小津さんらしさが随所に見られた。影の使い方や鉢植えに光が当たるラストなど、照明も印象的でした。
台詞は竹下景子と中井貴一による音声版。