KATO

私たちの幸せな時間のKATOのネタバレレビュー・内容・結末

私たちの幸せな時間(2006年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

切ないというか、ままならないと思わせるラスト。誰にもどうにも出来ないことはあるんだろう、と思える。

傷をかかえた男女、しかし二人の立場は全く違う。男は、3人の女を殺した死刑囚。女は自殺未遂を繰り返す、元歌手。
刑務所の男が言った、その女と会ってみたいという一言で、自殺未遂から目を覚ました女は、入院の代わりに毎週木曜日、男の元に通うことになる。

二人とも、優しい人なんだろうなと思う。めちゃくちゃなことを言うし、ちょっとついていけないという激情的なところもあるけれど、基本的にはとても良い人だ。優しくて、優しすぎて自分を傷つけている。
そんな彼らの優しさに、周りの人間がつけこんでいるのがとても不愉快になる。

二人は穏やかな時間を重ねていきながら、互いの核心を少しずつさらけ出していく。時には信頼を崩しながら、自分の柔らかい部分を見せていき、少しずつ傷を治していく。
互いのヒミツを知った二人はとても穏やかで、誰にも負けないくらいに幸せそうだった。

しかし、男は死刑囚である。男の犯した罪は、友人の分も引き受けていることを知った女は、必死に罪の撤回のために駆けずり回るが、結局それは叶わない。
木曜日の二人の幸せな時間は、男の死刑執行により続くことはなくなった。この執行のシーンが、どうも生々しく観終わったあとのやるせなさを増大させてくる。ひたすらに苦しい。

どうして、この二人は出会ったのだろうか。
もし、出会わなかったら、女はレイプの原因は娘にあると言った母親を憎み続け、自殺を繰り返していただろう。
男は、自分の犯した罪から目を背けるために、ひたすら何も感じないようにしていたかもしれない。
二人が出会えたことは幸せだった。本当に幸せで、何にも代えることはできない。期間限定だったから、二人は互いに歩み寄れたのかもしれない。
顔をぐちゃぐちゃにして泣く、二人の姿は見ているだけで胸を締め付けた。
KATO

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