mare

ラルジャンのmareのレビュー・感想・評価

ラルジャン(1983年製作の映画)
4.5
徹底的にミニマルで冷徹、ブレッソンの美的感覚に鮮やかに翻弄される。ほんの少しどこか精彩を欠いた瞬間があれば映画として破綻してしまいかねない恐るべき綱渡りを観客の理解力に委ねることで成立させている。言ってしまえばこれは"手と音の映画"だ。その2つが不穏に蠢きセリフに頼ることなく心理描写を代弁している。極端に省いた説明は目を覆いたくなるような結果だけを切り取り、そこに至るまでにあったであろう諍いや不毛な暴力は決して見せない。人間、結果を唐突に突きつけられるほど怖いものはない。それの連続で、しかも他人の悪意のせいで絶望の歯止めが効かずに転落していくのだからやりきれない。この映画は偽札が手渡されるやり取りから全てが始まるが、ブレッソンの手に対しての執着、不吉な前触れのようなショットの数々は絵としても一級品で相変わらずカッコ良すぎる。一回観て理解が全体に及ばないからこそもう何度か観たい。
mare

mare