ポスト・アピチャッポンとも形容できそうなあくまでも自然に根差した都市のリアリティとの共生。生活の中で消費されていく時間や食材、期限付きで追われるものが多すぎる現代に捧げられた一種のセラピーのように感じた。森の中で喧騒を忘れ、宇宙規模で無限な植物の世界を知り、男女の魂の邂逅を予感させる。何気ない触れ合いによって生物的な原初を描いていて、静かながらも雄弁な心の共有はじんわりと胸に染み渡ってくる。この監督が描く時間の流れは好みだし、丁寧でミニマムな人物描写の積み重ね、シーンは変わらないのにドラマ的躍動が一気に押し寄せる瞬間のカタルシスは味わい深い。
