抹茶マラカス

戦場のメリークリスマスの抹茶マラカスのレビュー・感想・評価

戦場のメリークリスマス(1983年製作の映画)
3.7
 大島渚監督作は初めて。よく考えたら日本の巨匠は黒沢明を何作か見たにすぎないな。
 戦時中の捕虜と日本兵の話。両者の交流を通して、西洋的な文化と日本的な文化、死生観や恥の概念の対立を描きながらも、それは愛や友情によって越えられることを示唆してくれる。とはいえ、現代の倫理観をもってすれば、大日本帝国の話になるや否や、基本の死生観とかのベースがどこかおかしい奴ら扱いできるので、ロレンスを始めとした捕虜側をヒロイックに捉えてしまう。実際、第二次世界大戦中に剣道だの切腹だの、いったいお前らは五稜郭の戦いや西南戦争の時代を生きているのか、って感じだし。これを日本における価値観がアップデートされたと捉えるのか、純日本的なものを奪われて価値観を強制されたと捉えるのかで、左右の対立とかはあるんだろうな、とそれも浮き彫りになった気がする。
 砲弾が飛んできたり、銃を撃つシーンがあったり、戦闘機が飛来したりするシーンが無くて、危機感のようなものは殆どない。それなのにどこか戦争のにおいがちゃんとするのは、やっぱり監督が戦争を知っているからなのだろうか。国家に殉じる人間の愚かさや小ささもしっかりと描き込まれている。