くすんだ車窓から見える景色。卵が見つからない朝。
なんとなく流れてゆく時間に置いていかれないようにしようとも、いつも自分だけ取り残されているような気がしている。
森のなかでうずらの卵の割れる音を聴いた。風が耳障りに鳴っていて、憐れな羊はいくら抗っても生け贄にされてしまう。羊はあるいは、わたしよりも何かの役に立っているのかもしれない。
佇む少女が美しすぎてわたしは息をのみ、すべてをわすれた。この世界の、とるにたらないこと、ぜんぶ。
だからわたしたちは今朝もチャイをカチャカチャ鳴らして、孤独を奏であう。
遠雷が聞こえる。突然世界が暗くなっても、もうしばらくは、怖くなんてない。