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夕陽のガンマンのボブおじさんのレビュー・感想・評価

夕陽のガンマン(1965年製作の映画)
4.1
黒澤明監督の名作時代劇「用心棒」を、そっくりそのまま無断でモチーフにして西部劇にした低予算映画「荒野の用心棒」でセルジオ・レオーネ監督はクリント・イーストウッドという金脈を掘り当てる。

皮肉なことに盗作の問題まで引き起こした作品は評判となり、マカロニ・ウエスタンの大ブームを起こす。ヒットしたことを受け前作の3倍の予算で続編的に作られたのがこの「夕陽のガンマン」だ。「荒野の用心棒」の原題は〝ひとつかみのドルのために〟だが、本作は〝もっと多くのドルのために〟となっている。この作品も成功したことで、マカロニ・ウエスタンの黄金時代が幕を開け監督のレオーネ、主演のイーストウッドそして音楽のエンニオ・モリコーネは世界から注目されるようになる。

ダンディな格好をし、様々な銃器を駆使する賞金稼ぎのモーティマー大佐(リー・ヴァン・クリーフ)は、あるお尋ね者を追っていた。だが、薄汚いポンチョをまとい、早撃ちを得意とする別の賞金稼ぎ(クリント・イーストウッド)も、同じお尋ね者を追っていた。2人が探しているのは、莫大な賞金がかかった“インディオ”と呼ばれる凶悪脱獄囚(ジャン・マリア・ヴォロンテ)オルゴールを鳴らしながら人を殺す悪党だ。2人はライバル関係にありながらも協力し、ともにインディオを追うことに…。

前作に引き続きレオーネ、イーストウッド、モリコーネの〝ゴールデン・トリオ〟は健在。加えて本作ではハリウッドから西部劇の名脇役リー・ヴァン・クリーフをイーストウッドと反目し合うライバルとして迎え、更にイタリアの性格俳優ジャン・マリア・ヴォロンテを過去にトラウマを持つ悪役として起用。それぞれの内面を描くことで前作より物語りに厚みをだし映画としてのスケールアップに成功した。

特にインディオの追跡に執念を燃やすリー・ヴァン・クリーフは、イーストウッドを凌ぐ貫禄で眼光鋭い魅力的なキャラクターを演じ、主役以上の存在感を見せた。

前作に引き続きモリコーネの音楽が、物語りの盛り上げに一役買っている。オルゴールの旋律の反復をクライマックスの決闘場面に持っていく演出は音楽と映像が見事に一体化したマカロニ・ウエスタン史上に残る名場面だ。