いはん

秋刀魚の味のいはんのレビュー・感想・評価

秋刀魚の味(1962年製作の映画)
4.2
小津安二郎映画が確立したには訳がある。
同じようなことを描いているように見えても、近づいてみるとその細部への拘りにハッとする。キューブリックやスピルバーグのように次から次へと違うジャンルを開拓していくのもいいが、小津のように自分の手の届く範囲のことをきちんと丁寧に描いていくのも素敵だ。

誰も映らない画面の中、観客は何を思うか。まるで小津が観客に与えてくれた”考える時間”。動的な画面の中では気づけない何かを読み取るのを待ってくれている。何を読み取るかは全て観る人の価値観に委ねられ、小津は干渉しない。

「けど、負けてよかったんじゃないか。」
小津は戦争を描かない人だと勝手に思っていた。でも、この漏れたように発された一言に小津は戦争への言い表し難い気持ちを込めたようにも思える。

まだ小津作品3作目とかだと思うが、おそらく、というかだいぶ小津安二郎という監督が好きだと思う。こういうことをするのは小恥ずかしくて普段しませんが、小津安二郎の言葉ですごく気に入ってるものがあるのでのせておきます。

「どうでもよいことは流行に従い、重大なことは道徳に従い、芸術のことは自分に従う。」
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