Tai

秋刀魚の味のTaiのレビュー・感想・評価

秋刀魚の味(1962年製作の映画)
4.5
秋刀魚の味を思い出し味わうべき作品。

※しかし、秋刀魚は1秒も出演しません。


Netflixで小津安二郎監督作を2作目!
本作公開の翌年に60歳という年齢で監督が亡くなられたという事で、こちらが遺作となっています。

私がこれまでに観た同監督作と内容は大体一緒です。
戦後の日本で、歳を重ねて、子どもたちは成長して社会人となり、親が娘の結婚を心配している。
しかし!食事シーンは何度もあるのに一向に秋刀魚は登場しません!鱧は出るのに‼︎
一体、何が『秋刀魚の味』なのか気になって逆に物語に集中しちゃいましたね。笑

作中で衝撃的だったのが「何で日本は負けたんですかね?」と日常会話として戦争を懐かしむ発言。
「あのままやっていれば日本は勝てたんじゃないか?」「そうすれば、今頃私達はニューヨークで暮らしてますよ。ガハハ!」なんて今、そんなことを言えば全力で「何言ってんだ。こいつ」と怪訝に思われるでしょう。
これは、監督が戦争を肯定しているとかいうことでは一切なくて、実際に戦地から帰ってきて、戦後にそんな事を言い続けている人も、そう珍しくない世の中だったのかなと。
若くして有り余る活力と共に日本軍で暮らした日々は、ある意味、彼にとっては青春であって、その日々が過ぎ去ったあとに懐かしみ想い馳せるのは、まるで旬の味覚である秋刀魚を食べたいと、それ以外の時期に考えているのと同じなのかなと、あのシーンを観て考察しました。

そういった面でも、当時の一般市民の考えや暮らしの何でもない部分を切り取り作品とするのが本当に巧みな巨匠作です。

他の作品でも思った事ですが、監督は戦後に日本で核家族化が進んでいった様子を、他にも色々と変わっていく生活様式とともに、幸せに思いながらも、寂しさを感じていたのかなと。
そういった意味では、脂がのって旨味たっぷりの身と、苦味のある腹わたのある焼き秋刀魚の味を人生と例えているようにも感じますね。

自分にとって人生を味に例えたら何になるだろう?
そんな事を考えながえる作品でした( ´∀`)b


作中、登場人物たちの会話がローテンションで淡々と進むのに、平然と過激なウソつくから一回本当に騙されました。笑
そこだけブラックユーモアすぎんだろ!
Tai

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