ひでG

蟻の兵隊のひでGのレビュー・感想・評価

蟻の兵隊(2005年製作の映画)
3.8
昨年、長野に居た時、オンライン池谷薫監督のドキュメンタリー塾で「先祖になる」を視聴。監督のお話も聴くことができ、
とても勉強になった。

池谷監督のこのドキュメンタリーもその時観たかったのですが、今回、レンタルして視聴。

中国山東省に敗戦後も残留して戦い続けた部隊がいた。

この映画の主役奥村和一さんは、
その残留は、上官の命令で、隊としての行動だったことを帰国後、ずっと訴え続けている。

その奥村さんを追った記録である。

裁判所は、奥村さんらの主張を受け入れず
個人的な残留と、訴えを退けるのだ。

このような事実を全く知りませんでした。

決定的な証拠が見つかっても、奥村さんの運動は進みません。

この作品を観た方の殆どは、あの映画、
あの人を想起するでしょう。

「ゆきゆきて神軍」の奥崎謙三さん、

同じ奥でも、奥村さんは、奥崎さんのような狂乱的、衝動的な行動はとらない。

司法の中で、真実を明らかにしようと正攻法で闘っている。

だからこそ、余計に虚しく、悲しい。

映画公開から数年、奥村さんはこの世を去っているが、
この映画をどう思っているか、映画の後の奥村さんの闘いはどうだったのかを
ぜひ、監督の池谷さんにお聞きしたい。

あんな悲惨な戦争の終結の後にも、まだ
個人より軍隊や体面が重んじられるのか!
この国は!

この作品を調べてるために、
ネットで「残留軍人映画」と検索したら
本作以外に、「ONODA」が出てきた。

残留軍人として、横井庄一さんとともに、最も有名な人、小野田寛郎さん。

実は本作にも、彼が出てくる。

全く意外な、私たちが知っている姿とは
かけ離れた「軍人」として、

日本軍に批判の矛を向ける奥村さんでさえ、ある場面で、「軍人」もしての生々しい姿を見せる。

加害側の奥村さんの証言、
中国の老婆の被害者としての証言

これが戦争だ、、戦争なんだ、、

そこには人間的な事柄なんて一欠片もない

ということをこのドキュメンタリーから
また、改めて感じ取ることができました。
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