ミミズ式SGキネマ倶楽部

ブルークリスマスのミミズ式SGキネマ倶楽部のレビュー・感想・評価

ブルークリスマス(1978年製作の映画)
4.0
映画を見終わった後でも、テーマソングの「ブルークリスマス」が流れています。岡本喜八監督の「殺人狂時代」を先日観て、「この監督は好きだぞ!」となったので、追っていると「ブルークリスマス」がサジェスト。早速観てみました。

 UFOによって青い血にされてしまった人間が、人知れず殺害されていくというストーリー。前半は報道の面から南という報道官を主人公に青い血の人間と兵藤博士を追うストーリーになっており、圧力によって次々と消されていく周りの人間に恐怖感が増していきます。後半は国防庁の沖を主人公に愛する人が青い血の人間と知りながら、翻弄される人間模様を描いています。SFながら特撮を使用しない意欲作である本作ですが、公開当時の結果は惨敗。しかし、徐々に評価されていった経緯があります。

 なんといっても竹下景子が初心でいいですね。序盤のシャッターを下ろす際のぴょんと跳ねる姿や、終盤自分が青い血を持つ人間であると告白するシーンの静かさ、そしてクライマックスクリスマスの準備をかいがいしく待つ姿などどの姿も非常にかわいらしく映しています。それだけにラストの虐殺シーンが強烈な印象を残していきます。

 血の色が異なるだけで同じ人間であるはずのものが、政府によって危険人物(劇中では敵性生物と呼称)とされ、次々と殺されていくことの理不尽さ。勝野洋と竹下景子のカップルを悲劇の象徴として、運命のイブを迎える世界の状況を、様々なテクニックを使って克明に描写していき、交わることのできなかった青い血と赤い血が混じるところで映画はエンディングを迎えます。

 総じて陰謀論のようなサスペンスから、悲劇のラストを迎えるメロドラマへと変化し、衝撃のクライマックスへとつながるというストーリーテリングに上手さを感じましたし。岡本喜八監督の色の使い方、そしてテロップやカット割りなど随所にエヴァンゲリオンに引用されるところもあり、隅々まで楽しむことができました。ブルークリスマス、おすすめです。