さわら

腑抜けども、悲しみの愛を見せろのさわらのレビュー・感想・評価

4.5
「桐島」も良かったが、やはり吉田大八監督の代表作といったら今作である。家族愛やら兄妹愛やら、腑抜けた愛を語る映画が多い邦画界において、今作はそんな作品に対し、一線も二線も画する傑作である。(家族愛や兄妹愛を否定しているのではない。しかし、近年の邦画においてその語り方が腑抜けているように思う)結局、「悲しみの愛」とは何だったのか。よくわからんことはあれど、色々考えを馳せることの出来る映画であった。そして何といっても、澄伽役の佐藤江梨子には感心した。自意識過剰のバカ女役がハマり役である。イエローキャブでいうと、グラビアから女優への転身例として小池栄子が挙げられるが、佐藤が小池ほど演技力があるかと言われると、甚だ疑問ではある。しかし、佐藤にはイタイ女役というポジションを邦画界に確立するだけの素質を感じられた。今後の彼女に期待してみたい。それにしても、田舎ってのどかでありながら、ある種の残酷さが底辺に流れているようだ。「桐島」での学校内ヒエラルキーの中でも感じた、ある種の不安や居心地の悪さ。今作にもそれに似たものが感じられる。目を背けてきた、それでいてそこに確実に存在する何かを、監督は鑑賞者に見せつける。吉田大八、恐るべし。