まっつん

ソイレント・グリーンのまっつんのレビュー・感想・評価

ソイレント・グリーン(1973年製作の映画)
4.0
リチャードフライシャー監督によるディストピアSFの傑作です。

とにかく本作についてはネタバレもクソもないというかあまりにも有名なオチがありますよね笑。ただこの作品の本質はそこではなく、「人を人とは思わなくなってしまった世界」を描いたことだと思います。

例えば女性たちが専業主婦のように雇われているんですが、彼女たちは「家具」と呼ばれています。さらに主人公ソーンの相棒の老刑事ソルは設定上「本の人」。主人公だから気にならないかもしれないけど、彼らだってそういう世界のコードに縛られて生きていることが仄めかされています。

で現実にも人を人とも思わない人っていると思うし、そういう人ってすげぇ増えてきてると個人的に実感があります。そういう意味では今観ても非常に恐ろしい映画だし、現在の世相にドンピシャだとも思いました。

さらに本作最大の見せ場はソイレントグリーンの真実を知ったソルがホーム=安楽死施設に行く場面。死を前にした儀式がベートーベンの「田園」にのせて荒廃してしまう前の地球の美しい景色がこれでもかと流れる。ここはもう言わずもがな大感動のシーンですよね。

そしてラスト、ソーンがソイレントグリーンの真実を叫ぶが果たしてその声は届くのだろうか?という若干突き放した視線が絶妙な後味の悪さを残していて非常に皮肉の効いたラストだと思います。