ノットステア

めがねのノットステアのレビュー・感想・評価

めがね(2007年製作の映画)
4.0
○感想
伊勢海老をバリバリ食べてるシーンをYouTubeで観たことがあって、そのシーンとか他にも美味しそうなシーンが観たくて…。もう飯テロ。夜中には観てはいけません。わかってても観てしまいます。伊勢海老をこんな風に食べたい!って思ってるのにまだ叶いません。。。
生で伊勢海老を食べてると思ってたけど、茹でてました。
伊勢海老食べたい。バーベキューしたい!美味しい食パンを朝食べたい。目玉焼きも作って豪華な朝食!みんなで一緒に。。。

静か。なんだろ、今だから観て楽しめた気がする。おもしろいできごととかなんもないけど、雰囲気を味わった、浴びた、って感じ。

微妙な関係の人たちの会話が、なんでもないはずなのに面白くて引き込まれた。
近すぎず遠すぎず。近くに寄ろうとするも、近くによることを強制しはしない。でも声をかけ、一緒に食べたり体操したりしましょうって誘う。

祖母の家に行くとき、それはとても田舎で、何もすることがない時があると思って、必ず本とか夏休みの宿題とかたくさん持って行ったのに、ほとんど読まなかったし宿題なんかやらなかった。ごろごろ〜ごろごろ〜して。たそがれてたんだな。あれは。それに、本なんか読めない、ってこの映画を観た今だからわかる。


亡くなった人が成仏するまで過ごす場所、という説というか解釈をしたものもあったけど、私はあまりそうは思わなかった。なんとなくその説に納得する部分もあったけど。生活感はまるでないし。。。とくにユージさん。。
でもだって、美味しそうにご飯を食べてるんだもん。生きるために。生きるための行動じゃないですか。食べることも、休憩することも。




以下、ネタバレありというか、備忘録というか。。。
ついついメモしたくなるセリフばかりでした。
ちょっとしんどくなったときとかに、手軽に思い出せるように。。。



○セリフ、出来事
春先の3年ぶりのお客さん。迷わずに来れた人も3年ぶり。
ユージ「才能ありますよ。ここにいる才能」

サクラ「おはようございます。(驚き、タエコがめがねをかけるのを待ってから)朝です。今日もいいお天気。」

ユージ「一緒にどうですか?」
誘うけど、断られたらあっさりと引く。

ユージ「“梅はその日の難逃れ“と言って朝出かける前に梅干しを食べるとその日一日は難を免れるっていわれているんです。“梅干しと友達は古いほどよい“ともいうけどあれはどうかな。私はあんまり古い友人がいないもんで」
サクラ「“梅は香りに桜は花”」
ユージ「“梅と桜を両手に持つ”」
タエコ「なんですか?それ」
ユージ「今の私の気分、フフッ」

観光するところなんてない。ではここに来た人は何をするのか。
ユージ「「たそがれる?」
タエコ「たそがれるねえ」浜で海をを眺めて「無理」

ユージ「あっどうぞどうぞ。ハルナさんがおいしそうなお肉をもらってきてくれてせっかくだからみんなでバーベキューをしようってことになったんですけどたそがれ中に無理に誘ったら悪いかなと思って」
タエコ「たそがれ?」
ハルナ「おいしい」
サクラ「どうですか?」
ハルナ「おいしい」
タエコ「いただきます」
サクラ「はいどうぞ」(ビールを注いで)
タエコ(ビールを飲んで)「あっすいません」
タエコ(タレをもらって)「ありがとうございます」
ユージ「うまいでしょ。どんどん食べてください。」
(ビールを飲むときはひきで撮ってて、最初にお肉を口に運ぶときにアップになる。)
(みんな急がず丁寧に口に運んでる感じがたまらん。バーベキューしたい。焼肉食べたい)
(誰かの肉はみんなで分けるもの、って当たり前な感じが良い。お客さんとも分けちゃう)

朝。
サクラ「おはようございます。朝です。今日もいいお天気ですよ」
タエコ「あの…」
サクラ「はい?」
タエコ「ここでは毎朝起こされなくてはいけないんでしょうか?」
サクラ「いいえ」
タエコ「では少しほっといてください」
サクラ「はい(笑顔)」
サクラが部屋を出ていき、メルシー体操の音楽が聞こえ始める
タエコ「うーん…ハア…無理」

車で移動中
ハルナ「ずいぶん大きな荷物ですね」
タエコ「そうですか?とりあえず必要なものだけ持ってきたんですけど」
ハルナ「必要なもの?」
タエコ「読もうとしてた本とか」
ハルナ「本。でもここじゃ読めないでしょ。サクラさんはね、毎年バッグ1つでここへ来るんです。ちょっとその辺に買い物にでも行くような感じで」
タエコ「毎年?ふーん。あのユージさんとサクラさんというのはどういうご関係なんですか?」
ハルナ「どういう関係に見えますか?」
タエコ「うーん、まっきょうだいとか?」(首を振る)「えっじゃご夫婦?」
ハルナ「はっ?どこをどう見たらあの2人が夫婦に見えるんですか。人を見る目なさすぎ」
タエコ「じゃあどういう関係なんですか?」
ハルナ「ものすごい関係」
タエコ(沈黙の後)「あの毎年来るっていうことはつまり…毎年来るっていうことですよね」
ハルナ「サクラさんは毎年春になるとここへ来ます」
タエコ「どこから?」
ハルナ「さあどこからでしょう」

ハルナ「あっ授業が」
タエコ「は?」
ハルナ「また遅刻。今月4回目なんです」
タエコ「授業?」
ハルナ「まっいつものことですから」
といって車のスピードを上げることもない。

ハルナ「タエコさんはなんでここに来たんですか?」
タエコ「え?」
ハルナ「こんな時期に1人で来るなんて…何か理由があるんでしょ?たそがれが得意なわけでもないのに。まさか…」
タエコ「私は…携帯電話が…携帯電話が通じなさそうな場所に行きたかったんです」
ハルナ「それだけ?」
タエコ「いけませんか?」
ハルナ「それだけってことはないでしょう。絶対ないですよ。絶対ない」
タエコ「それだけじゃダメですか?何か理由がないとダメですか?」
ユージ「アッハハッ。いいですよ。とてもいいです。うんうん。そう、ここはね、携帯電話が通じないの。いいでしょう。いいんですよ。さっどんどん食べて」

タエコ「ああっ」
ヨモギ「先生」
タエコ「なんで?」
ヨモギ「捜しました」
タエコ「ビール?」
ヨモギ「こちらのご主人が勧めてくださいまして」
タエコ「ああ…」
ヨモギ「先生。ここで飲むビールは最高です」
タエコ「ああ…ああ…(椅子に座ってよくここが分かったね)」
ヨモギ「それはもう僕は何よりもかによりも先生を想ってますから」
タエコ「ウソ」
ヨモギ「ウソです」
タエコ「空港からここまで相当迷ったでしょ」
ヨモギ「いえ全然」(ちびちびとジョッキのビールを飲む)

ユージ「いや…はい」
一同「うわああ…」
ユージ「近所の人にもらったの忘れてました」
タエコ「忘れてたんですか?」
ユージ「さっいただきましょう。(サクラさんからビールを受け取って)はい、じゃ乾杯」
一同「乾杯」
茹でた伊勢海老を黙々と食べる。「あっ」とか「うん」とか「うーん」とか。サクラさんはしゃべらないけど、いつもよりちょっと目を大きく開いて、伊勢海老の殻の向き方をタエコに見せてあげてるところがいい。

タエコ「たそがれるのに何かコツとかあるんでしょうか」
ユージ「あ…コツねえ…うーん。例えば昔のことを懐かしく思い出してみたり誰かのことじっくり想ってみたりそんなことじゃないですか」
タエコ「そんなことですか…」
ユージ「そんなことです」
タエコ「じゃユージさんも誰かのことをじっくり想ったりするんですか」
ユージ「ハッ…私?ハッ私はそんな私はただ…フッただここでじっくり待つだけですから」
タエコ「何を?」
ユージ「過ぎてゆくのをなんちってアハハッ。でもあの時あのかき氷に遭遇してなかったら私もコージもきっと今ここにはいない気がします。コージはね、大切なものをなんでもしまっておく癖があるんですよ。だけど何をしまったか忘れてしまうみたいで。フフッそこがコージのいいところです」
タエコ「そうですか」
ユージ「食べてみるといいですよ。サクラさんのかき氷」

ハルナ「ハア…死にたい。かわいい男子がいないと生きていく意味なんてない」
タエコ「学校はいいんですか?」
ハルナ「いいんです、休憩。いくら真面目にやってても休憩は必要です。そうでしょ?」
タエコ「確かに」

ハルナ「プラナリアって生物知ってます?(返事はない)かわいい目がついていて尻尾を切っても頭を切ってもまた生えてきて。切る具合によっては頭が2つ生えてきたり2匹になったりして。再生能力が非常に高い。今それを授業でやってるんです」
ヨモギ「死なないんですかね。そのなんとかは?」
ハルナ「プラナリア。そう。もしかしたら…永遠の命。すごいでしょ?」
ヨモギ「うん。すごいかな。でも僕はいいや」

浜辺でみんなでビールを飲む
ヨモギ「先生。」
タエコ「ん?」
ヨモギ「旅は思いつきで始まりますが永遠には続かないものですよ」
タエコ「知ってる」
ヨモギ「先生」
タエコ「ん?」
ヨモギ「僕はそろそろ帰ります。先生は…」
タエコ「うん」
ヨモギ「(ドイツ語で詩を読む“何が自由か知っている。道は真っすぐ歩きなさい。深い海には近づかないで。そんなあなたの言葉を置いてきた。月はどんな道にも光をそそぐ。暗闇に泳ぐ魚たちは宝石のよう。偶然人間と呼ばれてここにいる私。何を恐れていたのか何と戦ってきたのか。そろそろ持ちきれなくなった荷物をおろす頃。もっとチカラを。やさしくなるためのチカラを。何が自由か知っている。何が自由か知っている。”)」