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カルパテ城の謎のくりふのレビュー・感想・評価

カルパテ城の謎(1981年製作の映画)
4.0
【ドリフ&シュヴァンクマイエル】

ジュール・ヴェルヌ「カルパチアの城」を原作とした、チェコ製のほほんコメディ。

村で恐れられる城に幽閉された美女(?)奪還の為、ドリフチックな戦いを挑む、オペラ声で周囲を破壊するアッパー伯爵と、タライ落とされたカトちゃん顔を年中している森番、というへっぽこコンビの活躍が、ぬる~く描かれます。

このぬる~い展開、ぬる~い笑いに、お国柄らしき白っぽい空気が被ります。人を笑わせるより、自分の奇妙さを見せることが先!みたいな感覚が面白い。

が、まるでドリフじゃん、という笑いも仕込まれているから油断は禁物(笑)。そして、シュールに片足突っ込んでるところがとても気に入りました。

1897年が舞台。ブラウン管登場の年で、リュミエール兄弟がスクリーンに列車を走らせて2年後でもありますが、そんな世相を背負う科学者が登場。

「城の謎」の一つが、オツムがマッドな彼による、怪しき発明の数々で、その美術を大御所、ヤン・シュヴァンクマイエルが担当しています。

自身の監督作に比べると、全体では少々、おとなしい感じもしますが、マントの足元に隠し地面を滑っているように見える小型スクーター等、面白ガジェット次々登場し、最後には「美女の猟奇な正体」で、強烈な一発をかましてくれます。ここは笑いを通り越してゾゾッ、でした。

物語のキーワードとしては「独り占めのあと先」、でしょうか。モノやコトを独占したり、しようとする結果、その先に待っているもの。

バランス感覚に著しく欠けた人物ばかりが登場し笑いを誘いますが、結局、過剰は過剰で終わる、という結末ですね。意外とマジメな作品なのかも(笑)。

で、タライカトちゃん顔の森番ヤンさんは、本作のずっと後、シュヴァンクマイエル監督『オテサーネク』にて怪物の父として登場し、今度は鼻の尖ったピノキオ顔で、「特出」した存在感を醸し出すのでありました。

<2013.9.17記>
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