20年ぶりに再見。
本当に良い映画。
本当は、はみ出すくらいの大きな才能を持っているのに、自分のいる世界に合わせて身を縮めているジャマール。
自他共に認める偉大な作家であるのに、50年身を潜めて暮らすウィリアム。
ウィリアムは、きっかけを待っていたのかな。
待って待って、50年も経ってしまった。
ひっそり暮らす部屋で、日の目を見ない名作がたくさん生まれていたはずだ。きっと、書かずにいられないのが小説家なんだもの。
ジャマールの忘れていったデイパックの中に、彼の書き溜めたノートを見つけた時、ものすごくワクワクしたんだろう。
ジャマールの方は、誰にも見せたことのないノートをウィリアムに添削され、初めて教わりたいと思う人物に出会ったんだろう。
「小説家を見つけたら」という邦題がとても良いと思うのは、ジャマールがウィリアムを見つけたのと同時に、ウィリアムもジャマールを見つけたからだ。
2人の出会いが、それぞれの新しい挑戦のきっかけとなる。
友情がいちばん素晴らしい形で昇華されるさまに、人生の美しさを見た。
脇を固める人物も良い。
バスケの試合で、ジャマールが勝敗を決めるフリースローを直視できないママ。すごく気持ちがよくわかる。
定職につかないことをママに心配されているけど、調子が良くて弟思いの兄。本当にいい味出してる。
裕福ではないけど、ジャマールがきちんと愛されて育っていることがわかる。
ジャマールと恋の予感を漂わせるクレア。
「ピアノ・レッスン」のおませさんが、利発さ可愛らしさそのままにお年頃になっている。
「イカとクジラ」でもそうだったけど、賢くて生意気で、気になる男性には躊躇なく近づく、いたずらっ子な女子学生役が本当に似合う。
近影を見ると少し残念。
ジャマールに嫌がらせするクロフォード教授役のF・マーリー・エイブラハム、「アマデウス」でのサリエリと一緒じゃん!
嫉妬に燃えるインテリ役といったらこの人なんだろうか。
最後、ひとり突き抜けてしまったジャマールが、地元の友達とバスケするのも良かった。
一緒に育ってきた大切な仲間ということは変わらない。
そんな描き方にも、ガス・ヴァン・サント監督の優しさを感じる。
音楽もさりげなく効果的だった。
ウィリアムが夜中、街を自転車で走り抜けるシーンの映像と音楽がとても心地良い。
ちょっとやな奴は出てくるけど、本当の悪人は出てこないし、派手ではないが映像も音楽も抑制の効いた美しさと心地良さがある。
またいつか観ようと思う。