Denkishino

わらの犬のDenkishinoのレビュー・感想・評価

わらの犬(1971年製作の映画)
3.8
サムペキンパーらしいと言っていいでしょうか。暴力が暴力を呼び、後にはその痕跡だけが残る形容し難い作品。
後半の20分のために、あの惨事のために、前半があるようなものに感じました。
主人公は田舎にはほぼ無用な数学者。インテリで気弱な性格も災いします。その奥さんはどうにもまだ中身も幼く、構ってちゃんで旦那とズレが出てきます。
そんな片田舎の連中は、その新妻として戻ってきたかわいい女の子に夢中。その子にちょっとした挑発もされちゃって、ほかの若い女の子も村には少なさそうで辛抱たまらん様子。ご近所同士のイザコザもあって、不穏な空気もあります。
その微妙な均衡からの瓦解がすごく不気味でした。
過剰防衛と言ってしまえばそれで終いですが、あそこまでいってしまって、一体誰が止められるのかと思いますね。
たまにあるご近所トラブルからの殺人は、まさにこんな感じなのではないかと。
大きな不満ではなく、些細な不満の積み重ね。塵も積もれば山となる。そしてその山は、いつしか大きな音を立てて崩れる。
崩れたあとは、誰も行き先もわからないただその痕が残るのみ。

一番嫌悪なシーンは、奥さんが犯されてもそれについて一切何も言わないところ。「とてもそんなことは旦那言えない」っていう感じじゃない、なんならあんたがいけないの、ちょっと楽しんだ?って雰囲気がすごく嫌で…笑
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