ろくすそるす

わらの犬のろくすそるすのネタバレレビュー・内容・結末

わらの犬(1971年製作の映画)
4.4

このレビューはネタバレを含みます

<暴力>を断固許さない姿勢を取る者が、生命の危機に際して、自分が否定した暴力を行使することによって、命を救われるという作品。
 研究に没頭できる平穏な町を求めて、都会のインテリ(数学者)とちょっとおバカで色気むんむんの美人妻が田舎町に家を建てる。だが、田舎も暴力地帯だった。彼らの家の手伝いや修繕を行う田舎のチンピラどもが、妻に気があるようで、ちょっかいを出す。ダスティン・ホフマンの凄い人だけどちょっとなめられる感じの演技も良いが、やはり後半の寝取られ夫の逆襲のシーンのインパクトはデカい。悪役を一人ずつ殺してゆくホフマンの表情には、一皮むけた後の『冷たい熱帯魚』の社本(吹越満)のそれと重なる(内容だけでなく、ポスターもオマージュしている)。ペキンパーお得意のスローモーションも冴える。
 知らず知らずに妻を寝取った奴を庇うという構造に皮肉があるが、正当防衛により理性の側から暴力へと移動せざるを得なかった悲しさが残る。そして、主人公は居場所を失ってしまう。この世は暴力で満ちあふれているのだから。『ワイルド・バンチ』ほどのスケール感もなく、『ガルシアの首』の豪放磊落さやボブ・ディランがガンマンとして出演する『ビリー・ザ・キッド 21歳の生涯』ほどのリリシズムもないが、丹念なシナリオと画の説得力が凝縮された秀作だと思う。