極上の〝バイオレンス〟を堪能。
この映画を単に〝バイオレンス〟と言うには少し言葉足らずで、物理的暴力・心理的暴力など破壊的虐待行為の末路が描かれている。
欲望を曝け出し滴る涎を垂れ流すケダモノは、若き女の肉体を貪り尽くす。
現代劇ながらペキンパーのウエスタンの荒廃した世界観を漂わせながら、人里離れたイギリスの片田舎の一軒家に若夫婦は新居を構える。
前半のケダモノが獲物を物色するように嗅覚を張り巡らせ、忍び寄る静かな余裕は徐々に高まっていく心理描写。
そして後半の狙う者と狙われる者とが、狂気に満ちた退廃的バイオレンスの渦に全てが圧倒される。
男たちを魅了する〝スーザン・ジョージ〟の冒頭シーンで、既に危険な匂いをプンプン漂わせ男たちの欲望を掻き立てる。
主人公の若き〝ダスティン・ホフマン〟の臆病で生真面目な演技は素晴らしく、観ていてイライラするほど。
しかし最も印象に残ったのは下流階級の若者労働者の軽さとニヤけた表情で、欲望の塊を抑える内なる感情を上手く表現している。
神は生け贄と引き換えに善悪を区別し、極悪非道な行為すら無情にも見逃してしまう。
所詮、神は人間が作り出した虚像でしかない。
人間の醜さをこれでもかと見せつけられる、強烈なバイオレンス..★,