デニロ

近松物語のデニロのネタバレレビュー・内容・結末

近松物語(1954年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

有名な作品なのでどこかで観ていたかと思っていたが、5分も経たぬうちにちゃんと観てはいないのではないかと思う。近松の話はいろいろとあるので混同しているようだ。今回は香川京子の新聞インタヴューを読んで観に行こうと思ったのでした。あの記事を読まなかったらずっと観たつもりになっているところです。

苗字帯刀を許されている経師というものがどれほどたいそうなものかは知りませんが、本作の大経師新藤英太郎の有様を見ているとしっかりとした仕組みを作り収益を上げているようだ。そして、よく耳にする身内には厳しい大金持ちの態度がよく表れている。

新藤英太郎の後妻として嫁いで来た若き香川京子は一見何不自由なく暮らしているかのようだが、実家は火の車で、嫁に来るに当たりいささかの援助を受けたりもしている。

そんな背景なのだが道ならぬ道に入ってしまったのは手代長谷川一夫と香川京子。このふたりやることがドジで間抜けなカメ的な役割で、相当な不器用さ。観ていて苛々としてきます。その挙句に不義密通の疑いをかけられ逃避行。新藤英太郎は不義密通による科を恐れ妻を連れ戻し何もなかったようにしようと画策するも、番頭や商売仲間に足を引っ張られ思うにならない。

ひょんなことから逃避行を続けるふたりだったが疲れ果て心中を企てる。が、いまわの際に「お慕いしております」との長谷川一夫の言葉に、「死にたくない。生きたい。」と答える香川京子。

ふたりは捕えられ引き廻しの上、磔。新藤英太郎は取りつぶし。

引き廻されている香川京子と長谷川一夫のふたりには笑みが浮かんでいるが、死んで花実が咲くものか、と今のわたしは思ってしまう。

1954年製作公開。原作近松門左衛門 。劇化川口松太郎 。脚色依田義賢 。監督溝口健二 。

角川シネマ新宿 「溝口健二&増村保造映画祭 変貌する女たち」にて
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