HAYATO

近松物語のHAYATOのレビュー・感想・評価

近松物語(1954年製作の映画)
3.6
2024年62本目
日本映画を代表する巨匠・溝口健二監督作
近松門左衛門作の人形浄瑠璃の演目『大経師昔暦』を下敷きにした川口松太郎作の戯曲を脚色して映画化した作品
四条烏丸で働く大経師以春は、周囲に傲慢な振る舞いをしていた。彼の妻・おさんは、幸せそうな外面とは裏腹に、どこか物足りない気持ちで日々を過ごしていた。そんな時、彼女は、兄・道喜の借金の返済で相談に乗ってくれた茂兵衛と恋に落ちてしまう。
スター嫌いだった溝口健二監督が、大映・永田雅一社長の強い要請によって起用した長谷川一夫さんが主演し、『天国と地獄』の香川京子さん、『犬神家の一族』の小沢栄太郎さんの他、南田洋子さん、進藤英太郎さんらが共演。
「江戸の世の叶わぬ恋」という社会や男性の犠牲となる女性を描くことに長けた溝口健二監督らしい題材が扱われていて、身分の違う男女の恋愛模様が切なくも美しく描かれている。
世界の映画監督が影響を受けたという溝口健二監督のワンショット長回しとロングショットを組み合わせてワンシーンを作り出す演出や、移動撮影を用いた映像表現が、邸宅のシーンと夜のシーンで如実に現れていて、洗練された撮影技術の凄さを存分に感じることができた。
溝口健二監督作品や黒澤明監督作品など、数多くの作品の音楽を手掛けた早坂文雄さんによる本作の音楽は、まるで歌舞伎音楽のような音色で迫力があり、印象に残った。
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