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近松物語のガクのレビュー・感想・評価

近松物語(1954年製作の映画)
4.0
男が常に悪者である溝口の映画の中では、この作品は少しレアで、珍しく男がまともだ。しかしそれはあくまで茂兵衛と、その父親だけである。それ以外の男は見事にクズばかり。おさんのアニキが1番ムカつく。クソガキめ!

一方で女も、お玉とおさんだけが立派だった。他の登場人物は日本の封建社会に支配されている。最終的に恋の勝利となるストーリーは、西洋的である、と『溝口健二の世界』(佐藤忠男著)に書いてあった。

おさんが所司代に連れ去られてゆくシーンで茂兵衛が画面左下に転がり出すシーンはちょっと美しすぎてびっくりした。

お屋敷のシーンが多い分、画面に障子がよく写り込んだが、そこがシーンをのっぺりさせてしまった分、溝口作品の中では自分はやはり『残菊物語』の方が好きだ。
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