くりふ

白雪姫のくりふのレビュー・感想・評価

白雪姫(1937年製作の映画)
3.5
【ディズニー教典の誕生】

ディズニー100周年だからではなく、たまたま古いDVDが出てきたので、久々に再見。

単体で公開された世界初のカラー長編アニメ。“子供向け”の壁も打ち破った記念碑的作品。いま見ると、絵は松と竹が混在、話は梅、という後味。でも歴史には残り続けるでしょう。

ロトスコープを用いた作画部分は、永遠といえるほどにお見事!動かすことへの執念を感じる一方、撮影された動きをトレースするという機械的作業ゆえかクールに仕上がり、そこが現代の大人が見ても、美しく感じる部分ではと。

いわば手作業版モーションキャプチャ…いや、モーションドローイング?意義的には現代のCGに近しい手法だが、白雪姫の頭身を変える等、描画の良さがちゃんと乗算されている。

白雪姫のモデルはジャネット・ゲイナーらしいが、1812年版のグリム童話が元でも、アメリカ神話の理想少女に仕立てたのね。大恐慌続行中に生まれた保守的処女ヒロイン。本作の2年後には、大戦前夜にハリケーンと共に『オズの魔法使』のドロシーもやってくる…。

とはいえ白雪ちゃんは少しコケットで、マリリン・モンロー登場予告にも思えるけどね。処女だった頃のノーマ・ジーンをキャラクタ化したみたいな。でないとオッサンドワーフがあれほどデレデレするのはヘン。14歳設定でしょ、ただのロリオヤジになっちゃうからね!

ロトスコープ以外の部分では、女王パートのゴシックホラー美に感心!子供心にはコワイと思えるほど。世界一美しかった女が世界一醜い女に、体を張って変身するのも強烈だ。何?その執念…。アメリカ神話の少女を、ヨーロッパ神話の魔女に勝たせたい構図なのね。

…ちなみに女王さまは、末路も含めてきっと、SW銀河皇帝のモデルだよね!

ドワーフは、当時はコメディ担当として重要だったのかもしれないが…長い!くどい!睫毛の長いオッサンが、つぶらな瞳ではにかむ姿って…不気味でしょ!

ドワーフを幼児体型にして、オスの匂いを薄めたのはよき配慮。白雪姫に惚れ込むが、集団レイプまでは思いつかない…ように錯覚できるから。

で、このドワーフを始め、あちこちにロトスコープ部分との明らかな造形ギャップがあるが、ちゃんと馴染ませているのがディズニーのお家芸。現代では、機械が描いた部分とのギャップが問題になっているが、当時はペン一本で馴染ませていたんだよね!

お話の方は…引き算的な仕上がりで、だいぶ物足りない。原作に準拠しながら、当時としては精一杯、ディズニーチューニングしたのでしょうが。

無理矢理でも、冒頭で王子と出会わせたことがクッションにはなっている。原作の王子は、美しい死体と初めて出会い、死体に惚れてお持ち帰りしちゃうネクロフィリアだからね。

それでも、一目惚れのアホらしさは誤魔化せない。そこでミュージカル偽装の登場だ!脚本の穴を歌詞にすり替え、歌って誤魔化すディズニー詐欺は既に、ここから始まっていたか!

歌詞がなけりゃコレ、互いが惚れたのは美男美女で歌が上手いってだけ!ルッキズムの権化!

“真実の愛のキス”も原作から変えており、他のおとぎ話から流用したのだろうが、性的でありつつそれ以上の性描写が不要となる、画期的発明だったかもね。その後は全て、愛の要ではコレ、やっときゃよくなったものね。キスなのに道徳的に正しい!www

周囲の大心配をよそに制作を決行し、映画は大ヒットしたそうですが、そのヒットゆえかその後の作品…特に、ディズニープリンセスの教典ともなったように思います。

そのドグマが、足を引っ張ることにもなったようですが…。100周年記念『ウィッシュ』の不評は、その現れの一つではないかと。

<2023.12.20記>
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