めしいらず

エンター・ザ・ボイドのめしいらずのレビュー・感想・評価

エンター・ザ・ボイド(2009年製作の映画)
3.5
見ているこちらの意識がトリップしてしまいそうに目まぐるしいタイトルバックの格好良さ気持ち悪さ。ドラッグ常習者の主人公が見ているサイケデリックな幻覚。死に際に次第に混濁し薄らいでいく意識。魂は肉体を離脱して己の骸を見下ろし、そのまま外へと浮遊していく。そして見る走馬灯。彼は幼少からの生い立ちを追体験していく。妹の誕生。幸福な日常。目の前で両親が事故死したトラウマ。兄妹は別々に引き取られる。その後、成長した主人公は東京の退廃した裏社会の、クスリ三昧セックス三昧の爛れ切った生活に染まっている。わざわざ彼が呼び寄せて共同生活を始めた妹もまた兄と同じに堕落していく。しかし主人公は友人の裏切りによって射殺される羽目となり、魂となって妹や友人たちのその後を俯瞰して見ているのだ。ケバケバしいネオンに染まる大都会は、俯瞰するとまるで墓所とそっりに見える。その中で欲望を満たそうと蠢いている男と女。セックスはそもそも生命を宿す行為である。そして輪廻転生。いつかの約束を果たすため彼は妹の元に戻ってくるのだった。ギャスパー・ノエはこれで3作目。”死は究極のトリップ”という台詞通りの映像感覚がもの凄い。
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