もとまち

摩天楼ブルースのもとまちのレビュー・感想・評価

摩天楼ブルース(1979年製作の映画)
3.7
町の住民vs.チンピラ軍団の超小規模な戦争。世界の片隅で起きた小さな戦いを、ひたすらシンプルに描いた物語。このミニマムさこそがまさしくジョン・フリンという感じでたまらない。住民とチンピラが繰り広げる格闘も、アクションと呼べるほどカッコいいものでは全く無く、みんなで揉みくちゃになってモタモタ引っ張り合ったり殴り合ったりと、ガチの喧嘩っぽい泥臭い表現なのがイイ。そうしたリアリズムは流れ者の主人公: ジャン=マイケル・ヴィンセントのキャラクター性にも表出されていて、ひょんなことから町の英雄として持ち上げられる彼だが、実際はヒーローでも何でもなく、ちょっと喧嘩が強い普通の人なのが面白いところ。だから当然銃は怖いし、大人数を相手に勝つことも出来ない。彼が他の住民と違ったのは、己の尊厳を踏みにじった相手に対して、立ち向かう勇気を持ち合わせていたこと。そんな彼の姿に感化されて、臆病だった住民たちが一致団結してチンピラに立ち向かうラストはやはり激アツ。主人公と住民たちの人情味溢れる交流シーンも素晴らしく、ジョン・フリンの人間ドラマへの才気がスパークしている。下水ワニの話やボウリングデートなど珠玉のエピソードが盛りだくさんで、町を生きる住民たちの描写が実に活き活きしている。ラスト、チンピラのボスをついに倒した主人公が、魂の抜け落ちたように茫然とした表情で立ち尽くす様が印象に残った。
もとまち

もとまち