どなべ

英国式庭園殺人事件のどなべのレビュー・感想・評価

英国式庭園殺人事件(1982年製作の映画)
3.0
「コックと泥棒」や「数に溺れて」を見ていたので、ピーターグリーナウェイによる独特なプロットや演出には慣れていたし、特にストレスを感じずに見ることができただけでも個人的にはこの映画を見た価値があった

貴族に雇われた画家が絵を描かされているうちにその一家の不可解な事件に巻き込まれると言う話

西洋美術に明るくない身からすると「バリーリンドン」と同時代に思えたのだけど(バッハみたいな髪型が)、実は一世紀近く前の設定のようだ

確かに化粧や服装はかなり抑えられている印象で、顔を真っ白に塗ったバリーを見たときの滑稽さは無い

また重要なことに美術史という側面ではバロック時代とロココ時代という違いもあるようで、ロココ建築はキューブリックが好んだことからも分かるように左右対称が一つの特徴であるのに対し、この作品において建築を真正面から捉えているショットではストーリー上重要な小道具や人物でわざと左右対称を壊している様に見える いびつ・ダイナミズム・ねじれ等はバロックを表す重要なキーワードらしい

もちろんその歪みは素直に捉えればこのいかにも歪んだ一家のメタファということになるかと思うが、バロックにしろロココにしろ大陸で生まれたものだし、当時のイギリスのトレンドがどうだったかは全く知らない(建物自体は左右対称っぽいのに小道具でわざわざ壊しているというのも意味ありげ)

実際最後のシーンは美術史の世代交代を模しているように思えるし、イギリス美術のかなり深い知識がないときちんと理解するのは難しそう

ピーターグリーナウェイ自身も美術専攻で画家を目指していたような人物なので、その真意はもう少しこの分野を深く勉強するまで考えない方がよさそうだ
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