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驟雨のnのレビュー・感想・評価

驟雨(1956年製作の映画)
4.0
恥ずかしながら、初成瀬である。

お話としては、夫婦2人の身の回りの話を描いたミニマムなもので、夫婦2人の会話が70%くらいを占めるんではないか。しかもそのほとんどが夫婦の家で展開される。

しかし、(いい意味で)意図が明瞭でない、"ただそこにあるもの"としての描写、シーン、仕草があり、それが観てるこちら側にとって「これはどういう、あるいはどっちの意図なんだろう」と想像力を広げるというか。それによって引き込まれる感じがある。
たとえば、夫婦の隣に引っ越してきた別の夫婦がいるのだが、その隣の旦那がふと見せる表情など。ある場面では、自分の奥さんが主人公の旦那と映画に行ったり、食事したことに、ふと嫉妬するような、微妙な表情を見せる。そこでそっちの方向に話が進むのかと思いきや、そうではなく、また別の場面では、主人公夫婦2人に親切な行動を見せるなど。
別の例では、さんざ原節子が可愛がっている野良犬を町内が嫌がっている描写を出し、いわゆる"フラグ"を立てまくるのに、いざ町内会の場ではほとんどそれについては触れないなど。

言い換えれば"深み"ということになるかもしれない。
個人的にはそういう全てを説明しきらず、こちら側に想像を起こさせる映画は面白い映画の条件である。そしてこの面白さが成瀬的なものなんだろうが、もっと観てみたいと思った。

てかこういうのあるって、もっと早く教えてよ...。めっちゃ好きなやつ。
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