りっく

柔らかい肌のりっくのレビュー・感想・評価

柔らかい肌(1963年製作の映画)
4.0
陰鬱で皮肉な冷たさに沈んでいるように見える三面記事からの色恋沙汰物語。離婚に応じない妻と、肉体関係を結びつつも結婚には応じない愛人。感情の袋小路に陥る中年の文芸評論家の姿がイタく、気色悪く、それでいて人間臭い。

恋愛の卑俗な側面にこそ、人間の真実が露呈する。愛の暴発を恐れてかえって思わぬ悲劇を引き寄せてしまうリアリズムが炸裂し、前半に調子に乗りすぎた男は、後半にすべてを精算しなければならない。

柔らかい手というタイトルもそうだが、手をひたすらにカメラで追うトリュフォーのショットの積み重ねはブレッソン的だ。特に部屋の電気のオンオフで心の高揚や抑揚を描写してみせる演出が良い。
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