りょうすけ

サンタ・バルバラの誓いのりょうすけのレビュー・感想・評価

サンタ・バルバラの誓い(1962年製作の映画)
4.0
「サンタ・バルバラの誓い」

ブラジル音楽で祭り上げられる新たな救世主。第15回カンヌ国際映画祭にてパルム・ドールを受賞したブラジル映画。物語は十字架を背負った男とその妻が業火を背に去っていくところから始まる。ジャングルを抜け、辿り着いたのは教会の前にある大階段。教会の扉が開くまでここで待つと言い張る男と、ベッドが恋しいと嘆く妻。そこに現れた1人の男。その男と妻はホテルに向かうが、夫は教会が開くまで待ち続ける。

翌日、教会が開くとともに神父はその男に何故十字架を背負って何マイルもの道をやってきたのかと尋ねる。なんでも自分の飼っているロバを助けるために十字架を背負い教会に行くという誓いをしたという。神父はこれをキリストの真似事、神への冒涜とし、彼が教会の入ることを拒否する。一方、昨夜妻をホテルへ連れて行った男は実は新聞記者であり、十字架を背負った男を記事にしようとする。その宣伝効果があってか、彼は新たなキリストとして民衆に祭り上げられてしまう…

Filmarksでの評価は低いが、非常に面白い作品である。冒頭の十字架を背負って街へ街へと練り歩くシーンや民衆が彼らの音楽で男を祭り上げるシーン、そしてラストの展開までもがビジュアル的に美しい。1時間くらい経った頃であろうか、若い黒人の男がカポエイラで彼を讃えるシーンがあるのだが、このシーンが凄く良かった。

自分の行いを果たすまで家に帰れないという男とそれを頑なに拒否する神父そして男にその約束を捨て、新たな神との誓いとして教会に入ることを許すという更に上級の聖職者たち。許すか許さないかという議論がずっと続くスタイルなので、キリスト教的信仰に興味がない人はあまり興味を惹かれない作品なのかもしれないが、私的には非常に興味深い議論の作品だったと思う。

パルム・ドールを受賞していながら日本で観ることがなかなか困難な作品だが、YouTubeに割といい素材がアップロードされている上に、日本語の同時翻訳の出来が結構いいのでおすすめである。
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