「モヒート中毒なんだ。」
今作の監督、マイケル・マン氏が手がけた大ヒットテレビドラマシリーズの映画版。
シーズン1の第15話「運び屋のブルース/Smuggler's Blues」と言う物語をベースにしているとの事。
冒頭の「」内の台詞は、作中コリン・ファレル氏演じるソニーが口にしている。
モヒートは、ラム酒ベースのカクテルでミントとライムの香りと、よく冷えたスッキリとした飲み心地で、ほんのり甘酸っぱい爽やかな後味の、夏向きのカクテル。
ミントの旬も夏の時期なので、正にこれからの時期にぴったりの飲み物。
ソニーがイザベラをお酒に誘い、イザベラがソニーにお酒の好みを聞く。
そこでソニーが、冒頭の台詞「モヒート中毒なんだ。」と返答する。
するとイザベラは、最高のお店に連れて行くと言う様な事を告げ、キューバの「ラ・ボデギータ・デル・メディオ」へとパワーボートを飛ばす。
ラ・ボデギータ・デル・メディオ(以降ラ・ボデギータで統一)は、かの文豪アーネスト・ヘミングウェイ氏が愛したお店として知られている。
言ってしまえば、世界一有名な「モヒートのお店」。
「My mojito in La Bodeguita/My Daiquiri in El Floridita/Ernest Hemingway(我がモヒートはラ・ボデギータ/我がダイキリはエル・フロリディータ/アーネスト・ヘミングウェイ)」、これはラ・ボデギータ店内に掲げられたプレートに書かれている文字で、ガイドブックなどでも紹介されており、それをきっかけに多くの観光客が訪れているらしい。
ボデギータの常連客だったヘミングウェイ氏が、ここのモヒートを愛したとされているのだが、実のところは違うのでは無いかと考えられてもいる。
これは、ヘミングウェイ氏本人が書いたのでは無く、ラ・ボデギータの創業者の友人が商売繁盛を願って贈ったもので、いわゆるジョークグッズであると言う見解があり、様々な証言などから、その説がかなり信憑性が高いとも言われている。
これらに関しては、お酒に関する数々の物語などを出版されているオキ・シロー先生著の「ヘミングウェイの酒(河出書房新書)」の中で、より詳しくかつ簡潔に語られている。
話は映画に戻り、肝心のそのボデギータのモヒートだが、まず2人はイチャイチャと語らい合い、目の前のモヒートを傍に追いやっている様にすら見える。
うつつをぬかしてお酒をほったらかしにしているからもあってか、ミントもまばら、グラスもあまり冷えていない様に見える。つまり、全然美味しそうに見えないと言う事。
映像からは判別出来ないが、キューバのモヒートには、イエルバブエナと言うキューバ原産の香りの強い種類のミントが使用されている。
日本でも、ラム酒専門店などで、キューバのミント「イエルバブエナ」のモヒートをいただく事は可能。
中には、お店で栽培されている方もおられる。
作中、結構長めの茎が付いたままのミントが、グラスの中に見受けられる。ミントの茎は、苦味成分を含むので、大抵の場合は茎から外し葉っぱだけを使用するレシピが主流。
その後の展開を考えると、茎で苦味が効いたモヒートと言う点が感慨深い。
土地柄、季節、作り手毎にレシピが異なるので、お好みのモヒートを探すのも面白いと思うのでおすすめ。もちろん、誰と飲むかでも味わいに違いが出る。
それがひょっとしたら、キューバのラ・ボデギータのレシピかも知れないし、お酒を傍らに追いやるくらい夢中で最愛の相手と愛を語らい合っている時の味かも知れない。
【総括】
巧みな視線誘導などで、ハラハラドキドキの展開。
終盤のガンアクションも見ものだが、ストーリーが面白い。
勝手な憶測だが、今作の評価の低さは、TVドラマシリーズ版とはキャストが異なる事からなのでは無いかと思うほど、とても面白い作品。
そして、本当に美味しいモヒートとは、ほんのり甘く酸味と苦味の効いたお味なのかも知れない。
※個人的には、茎の苦味があまり効いていない方が好き。