みゅうちょび

ゴールデンボーイのみゅうちょびのレビュー・感想・評価

ゴールデンボーイ(1998年製作の映画)
3.4
ナチズムに異常に興味を抱く高校の優等生である若者が、ひっそりと身を隠していた戦犯元ナチスの将校を見つけ、周到にその素性を調べた挙句、収容所での話を聞かせなければ警察に通報すると脅し、将校が実際に関わったおぞましい体験談を聴くうちにその世界に心酔して行くというなんとも恐ろしい話。

スティーブン・キングの原作をマイルドに上手く纏めてはいると思うけれど、原作はもっと陰惨な話だったと記憶しています。

年寄りとは言え、元ナチの将校。油断できない相手。ましてや、どんなに頭が良かろうが相手は高校生という危うい関係。
2人の関係が次第に変化というか進化して行く様が非常に不気味。

戦犯として隠れ暮し、己の中の過去の亡霊を封じてあたが、彼の話に心酔し聴き入る若者に優越感のようなものすら感じ、仕舞いには猫をオーブンに投げ入れようとしたり(ここはもう、全力で猫を応援!!逃げてー!よっしゃー!) 、命を自分が制している快感を再び味わおうとしたり。弱々しい老人に見える男の目の中に垣間見れるおぞましい欲求。そんな人物が近所に住んでいたらと考えるとまた更に恐ろしい。

中でも、若者がナチ将校の衣装を買って老人にプレゼントし、当惑しながらもその衣装を身につけ、命令されるままに部屋の中で行進の真似事をさせられるうち、過つてのキビキビとした足運びや敬礼まで取り戻して行くその姿たるや、狂気の演技を捉えた映像のはくりょくはまさに鬼気迫るものがあり背筋が寒くなった。

その残忍な精神が将来を約束された優等生の若者へと受け継がれて行くとは…人の心に巣食う理性を欠いた探究心が道を誤れば再びナチズムを復活させてしまう危険を秘めている。

ただ、原作と異なる本作のエンディングではその辺りを強く仄めかしてはいるものの、彼がこの老人のなにを受け継いでいるのかがハッキリとしないと感じる。原作がどう描かれていたか…残念ながら覚えていない…

原作と併せて鑑賞すると良いのかもしれない。映画を観てから、原作を読む方が、映画は楽しめると感じた。

わたしも、改めてこの原作を読み直したいと思う。
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