みゅうちょび

冬の旅のみゅうちょびのレビュー・感想・評価

冬の旅(1985年製作の映画)
3.1
カメラが冷ややかに映し出す主人公の姿を、わたしも冷ややかに眺めるしか術がなかった。
真冬の早朝、凍てつくブドウ畑の土の上で発見された女性の遺体。まだ、あどけなさすら残るその顔は泥で汚れ、凍死と推定される。

知り合いの女性が数年前に劇場でこの映画を観て、とにかく好きで堪らないと言っていたけど、その女性自身、お風呂が大嫌いで性にも開放的な人だったのでその点は、至極納得した🤔

それはおいておいて、ずっと観たかった本作がこれまた予期せず7日間のお試し期間中のスターチャンネルEXに転がっていたのを鑑賞。

監督のアニエス・ヴァルダはわたしの世代だとなぜかやたら名前だけは知っている。彼女のフィルモグラフィーをみたけれど、わたしは鑑賞したことがある作品はほぼなかった。恐らくだけど、自分的には苦手な部類のフランス映画だからかも。。。

本作も、残念ながら自分的にはなにも刺さるものはなかった。

主人公モナがあてどない一人旅の中で出会う人々。女性たちは自由奔放に生きるモナを羨み、まるで自分が失った大切なものを彼女がもっているかのように彼女をのことを語る。因みに、この映画はほぼ全編が冒頭で遺体となって発見された彼女の旅の経緯を追い、彼女が死んだことは伝えないまま、出会った人たちに彼女のことを尋ねていくと言う設定になっている。

彼女、モナは人に良くされることはあっても、礼も言わず、仕事を世話してくれようとする人には「楽して生きたいのよ」と言って、その場しのぎな仕事しかしない。ただ縛られることを嫌い、その旅には目的などなにもないようにみえる。

わたしが、もし20代の頃にこの映画を観ていたら、きっとなにか彼女に共感できるものがあったかもしれない。けれど、今のわたしには、正直なんの感情も湧かなかった。
自業自得であるという思いすら湧かなかったのは、おそらく彼女が自分の死すら意識せず、なぜそうなってしまったかを後悔すらしていないように思えた。

びっくりするくらい唐突に終わるこの映画のラストの彼女の瞳の中に初めて見える「恐れ」、その時彼女の頭の中には過去のなにが走馬灯のように映し出されたのだろうか?・・・そもそもそういう光景が彼女の頭を巡ったのか?

身分証すら持っていない彼女と出会った人々の浅い記憶だけで作り上げられる彼女の人物像が語られるのがなんとも虚しかった。

ただ、彼女の姿は妙に心に焼き付いているのは間違いない。

後で思い出したけど、多分、アニエス・ヴァルダ監督作「歌う女、歌わない女」は劇場で観たっぽいけど、当時はまだ自分がついていけなかった気がする。
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