みゅうちょび

水を抱く女のみゅうちょびのレビュー・感想・評価

水を抱く女(2020年製作の映画)
3.6
過去観賞

多分酔っ払ってかいたなと思う内容なので、気にしないでください〜。

めちゃくちゃ好きな作品!

水の精、ウンディーヌを題材に、現代に紛れて生きる彼女の切ない恋を描きます。

いきなり冒頭は、ウンディーヌが恋人から別れを告げられるカフェでのシーン。え?メルヘンな感じが全くないんすけど…

この段階で、正直な話、え?これが水の精なの?
普通の、しかも、そんなに際立った美人でもない…
そしてその彼女は男に「わたしを捨てるなら、あなたを殺さなければならない。」「わたしはあなたを愛してる。30分後に戻るから、その時には、愛してると言って」と困り顔の男を残して去っていく。

メンヘラ感漂うごく普通の人間の女性にしか見えないんだけれど、彼女、ウンディーヌが水の精。

水の精であるウンディーヌ(オンディーヌとも言う)の話は簡単に言うと、人間ではない彼女(実際は女性の姿をしているということらしい)には魂がなく、人間から愛され結ばれることで魂を得ることができる。しかし、相手が彼女を裏切ったら彼女はその相手を殺さなければならい。そして愛されて一度人の魂を得ても水に帰ればそるは失ってしまうという。

人間世界で生きるためには、愛されなければ生きていけないと言うこと。

彼女が特別凄い特殊能力を備えているわけではなく、ただ人間の男性を愛し愛されることだけを糧にしているという無力感と言うか儚げと言うか、そこがいいんだよなー。

水の精なのに水の中では幸せにはなれないの?

このことを言葉で説明することはないのだけれど、そういうことか…と分かるシーンがあって、そのシーンがとても印象的。水中のシーンが神秘的で美しい映画は数あるけれど、この映画の水中は湖で、海のように波がたっているわけでもなく、静かで暗くて生き物もあまり見えない。そんな中に現れる巨大なナマズ。人知れず湖の底で生きている生物。そして水中で水の精は…

水の精が魂を求める。その理由がなんだか分かるんだよなー。

人間世界での運命的な出逢い。

え?そのタイミングで?と思う突然の出逢いを唐突に感じる人もいるかもしれないのだけれど、わたしは納得。愛されていないと生きていけない彼女は、切れ目なく愛されないとならないんじゃないかな。そこがまた切ないんだよね。

この映画の中で1番好きなシーンは、ジャケ写にもなってる、2人が肩を寄せ合って歩くシーン。まるで2人とも眠りながら歩いているよう。夢見心地で2人の世界に浸っているのが観ているこちらにも伝わる。

この姿が目に焼きついてる。
胸がキューンとして心がポカポカ温まる。ずっと見ていたい。ずっとこうしていたい。

運命の男性であるクリストフも特段ハンサムと言うわけでもなくて、ごく普通に人の世界に溶け込んで、目立つこともない2人。それがいいのよー。

美しく悲しい音楽、ふと耳に入る電車の音、咽び泣くような呼吸機の音、水中の静けさ。

さりげなく異空間に誘われていく心地よさ。

静かなラストも大好き。

深い深い愛の話。

この監督作追いかけてみたくなる。
みゅうちょび

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