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イップ・マン 葉問のmegurosのレビュー・感想・評価

イップ・マン 葉問(2010年製作の映画)
4.2
ドニー・イェンのイップマンシリーズ第2作。葉問=イップマンなわけだから、イップマンイップマンってどういう邦題なんだ...というのはまずあるが、本作は1949年の終戦直後のイギリス領香港が舞台。佛山から香港に移ってきて武館を建てようとするイップマンだが、香港武会のしきたりで線香の火が消えるまでテーブルから落ちてはいけない戦いをやらされる。テーブルの周りには椅子が逆さに配置され、昔は剣山だったと語られる舞台立てがまず良いし、各師匠のテーブルへの登り方、vsサモハンキンポーにおける距離が取れない体重差バトルもフレッシュで、少林サッカー感すらあるアクロバティックな技の応酬が楽しめる。

後半は中国vs西洋がテーマに。イギリス人ボクサーに中国武術が侮辱され、イップマンが誇りをかけてリングに上がる(しかし、戦いは優劣を決めるものではないとするイップマン哲学がシリーズ通して貫かれてもいる)。西洋人の重い攻撃に苦しむのは3作目におけるvsマイク・タイソン、4作目におけるvsスコット・アドキンスでも変わらないが、ここでは先に敗れ、命を落としたサモハンキンポーの姿とが重なることで勝利を掴む胸熱演出になっていて燃える。(クリード一作目の胸熱アポロ展開はここからもヒントを得ているのでは...?!)

ゴングを鳴らすタイミングを調整されたり、キックを途中で禁止されたり、それを仕切っていた警察幹部も含めて西洋が完全なる悪役として描かれるが、最後に”香港警察の恥だ!!”と言いながら現場に先頭で乗り込んでくるのは別のイギリス人...というバランス感になっている。

香港警察における西洋人上司に困る波刑事役に、ワンチャイで林世榮(ラムサイウィング)を演じていたケント・チェン。サイモン・ヤムが戦時中のゴタゴタで頭を撃ち抜かれて脳障害となり(その顛末が冒頭サラッと回想され)、立派な工場長だったのに肉泥棒になってしまっていたのは切ないが、だからこそイップマン勝利時のリアクションは涙を誘う。奥さんはこの頃妊娠してまたブーブー言っているが、それもまた3作目に向けた伏線に...。
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