ぼっちザうぉっちゃー

桐島、部活やめるってよのぼっちザうぉっちゃーのネタバレレビュー・内容・結末

桐島、部活やめるってよ(2012年製作の映画)
4.2

このレビューはネタバレを含みます

名前だけは遥か昔から聞いたことがあり、主題歌を飽きるほど聴いていた作品、やっと観賞。

バレー部キャプテンにして学校のスター桐島の退部と連絡途絶をきっかけに、部員や友達、その恋人や、またその友達、というように静かに、しかし確実に関係性に変化が訪れ、そして桐島が登校したらしいという噂を契機に各々の物語が一つの臨界点を迎える。

秋、特に浮足立つでもなく、寒々しい雰囲気が漂っているでもない。なんでもない季節。それがまた無駄な風情やドラマチックさを削ぎ落していて、群像劇に没入しやすかった。
まず神木隆之介のモブ感が丁度いい。そしてそんな陰キャが好きになりそうな橋本愛が想像外のしっくり感で(演技はともかく)、個人的にこれはイチコロだなと思った。そんな存在をいわゆるヒロインぽく描くのではなく、あくまで数多いる学生の中での小さな片思いに終始するのがなんともこそばゆく、それでいて自己満足を得てしまうのが情けなくも心地いい。

ラスト、桐島探して一堂に会する面々屋上にて。鳴り始める吹奏楽、音を添えるは恋に破れた乙女の演奏、突如始まるゾンビ(底辺)の逆襲、そして目撃する、血と嫉妬と、臓物と欲望にまみれた前田主観。

圧倒的にパワフルで妙な爽快感があるクライマックス。ヒエラルキー上位に群がりその血肉を喰らう底辺のゾンビたち。それは陰キャの反乱であること以上に、リア充たちの煩わしい人間関係や汗水垂らす青春なんかに憧れ、そしてそれ(映画)を見て、自分たちの青春の食い物にしている私たち(観客)自身を指している。というある種メタ的な表現、風刺にも思えて、その罪深さや闇深さに向き合わされた気がした。

それでも最後、なにもできない熱意ある前田が汚いフィルムで、なんでもできる熱意なき菊地を映す手を下ろし、向き合うのは一人の人間として。そしてその眼差しにあてられて、携帯耳にグラウンド見つめる菊池。果たして彼は桐島に何と言うつもりなのか。

シンプルな舞台装置、味付けながらここまで見ごたえある人間ドラマ。群像劇の可能性は無限大だなと、月並み以下なことをぼんやり考えた。

さようなら、愛しき人。爆ぜろ、傀儡となった青春よ。

陽はまた昇る。