花椿

少年は残酷な弓を射るの花椿のネタバレレビュー・内容・結末

少年は残酷な弓を射る(2011年製作の映画)
3.7

このレビューはネタバレを含みます

ティルダ•スウィントンが原作に惚れ込んで映画化した作品。概ね小説通りで良かったと思う。母親が買ってきたばかりのバターでマスターベーションするシーンがちゃんとあって嬉しい。
エズラの妖しげな美しさが最高。

工事現場の大きな音で赤ん坊の泣き声がかき消され、ようやく安寧を得られるシーンに胸が痛くなる。


母親への当て付けに父親と仲良くしているだけで、父親が好きではない。むしろ嫌い。
どうしてケヴィンがあそこまで母を憎むのか、小説でも言及されてはいないけれど、彼は“生命”そのものを憎んでいるからではないかと思う。

生まれる、生まれないという選択権が自分には無いこと、生まれる先が選べないこと、運命なのか偶然なのか分からない理不尽な生命のシステムに反抗しているからこそ、母親を恨んでいる。

そして生命に対抗するには自分もまた理不尽に命を奪うこと、だから何とも思っていない同級生たちを殺した。神や悪魔のように。意味も分からずやり方もわからず勝手に与えられる人生、命のサイクルを壊すために。

けれど夫も娘も殺した息子を、それでも受け入れた母親の強さにケヴィンはようやく生命、人生を受け入れる。

悲しいことに、生き物にできるのはただ受け入れることのみ。
花椿

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