イチロヲ

セックス調査団のイチロヲのレビュー・感想・評価

セックス調査団(2001年製作の映画)
3.0
学問としての「性」を考察している学者が、有識者(=性の探究者)による討論会を実施しようとする。アンドレ・ブルトンの草稿「性に関する探究」をベースにしている、ヒューマン・ドラマ。

1929年のアメリカを舞台にして、性のタブーに挑む人々の道程を描いている作品。「性科学」という分野が確立される以前の人間模様を、できるだけ史実に近づけてスケッチしており、討論の会場に集まる人々の群像劇が繰り広げられる。

この手の作品は、登場する研究家たちの「学者脳」に訴求力をもたせるパターンが多いのだが、本作はびっくりするほどストイック。笑っちゃうほどの「学者悩」が表現されていないため、映画的なエンタメ要素は後退している。

しかしながら、マスターベーションという言葉すら一般的ではなかった時代の「性の問答」を再現しているところは及第点。野坂昭如、澁澤龍彦、寺山修司、藤本義一、小沢昭一といった作家から、未知なる性を伝授してもらった思春期を回顧することができる。
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