BON

幸福の設計のBONのレビュー・感想・評価

幸福の設計(1946年製作の映画)
3.9
ベッケルの長編4作目で、“パリ下町三部作”の第一作。カンヌ国際映画祭恋愛心理映画賞受賞作品。鮮やかなカメラワークと第二次世界大戦の終結後のフランスで明日への希望で浮き立つ市井の人々の雰囲気に魅入った。

パリの安アパルトマンでつつましくも幸福に暮らす労働者階級の2人の男女を描き、ある日80万フランの宝くじが大当たりし、くじ札を男が失くしてしまい、札を巡って繰り広げられる悲喜劇の物語。

原題はこのカップルの2人の名前で、『アントワーヌとアントワネット』。2人の容姿端麗さには目を奪われるが、美しい容姿のおかげでアントワネットは男に絡まれることも多々あり、金持ちの初老の男は気持ち悪くて辟易した。

花を初老の男に押し付けられてアントワーヌにバレるまでの展開のスピード感も、モノクロの美しさも、螺旋階段を効果的に使ったシーンや、失くしてしまったくじの思い出し方、他にも色々と印象的なシーンはあるのですが、オチまで完璧な珠玉の一作。

観衆はくじがどこにあるかも分かっているのが更に面白いところだった。人のあたたかさと大胆な音楽でくどいほどエンターテイメント性が高いものの、素直にベッケルは初期から観衆の心を鷲掴みにする天才だった。
BON

BON