Ash国立ホラー大学院卒論執筆

ハロウィンのAsh国立ホラー大学院卒論執筆のレビュー・感想・評価

ハロウィン(1978年製作の映画)
3.9
【誰も真似出来ない、究極の殺人狂】

ハロウィンの夜。15年前、わずか6歳で姉と母を殺傷した"悪魔の化身"が精神病棟から脱走し...

常世の悪夢、この世の地獄、「隔離精神病棟」から悪魔が脱走し、町に血の雨が降る。
BluRayバージョンのマイケル・マイヤーズのキュートでエキセントリックな仮面は、綺麗に白光りしている。暗闇の中からンヌうゥッと浮かび上がるそれは、まるで冥界の底から這い出た亡霊のよう。

「ブギーマンだ!俺たちを殺すために地獄から這い出て来たんだ!」

フレディやチャッキー、ジェイソン、プレデターなどの理性のある殺人狂達は、シンプルかつ効率的に殺していく。そして、トレマーズやエイリアンは本能的な"狩り"を魅せる。『ゴーン・ガール』や『エスター』のイカれ女共は人間的で明確な目的がある。

だが、マイケルは違う。過剰にひょっこりはん的に怖がらせたり、殺しの後の"細工"もウィットに富んでいる。命を奪うことではなく、あくまで怖がらせることが至上命題なのだ。

生ける悪夢ハンニバル・レクター博士でさえ、幼少期は普通の純粋な少年だった。だが、マイケル・マイヤーズはたったの6歳でその溢れ出る殺人衝動を爆発させる。レクター博士のような強烈な"きっかけ"は何も無く、まるで殺すことを命に生まれ落ちたかのよう。

人として当たり前な良心の呵責は皆無で、殺人鬼にありがちな幼少期の人格崩壊もない。それに単なる"殺し"が目的ではない。
これはもはや人間、いや命ある生物と言えるだろうか。

マイケル・マイヤーズが他の殺人狂達(人間やエイリアン、動物問わず)と一線を駕すのは、この世あらざる存在と確かに裏付けられるからだ。

今作はインディペンデント映画では世界一の興行収入を誇る。マイケル・マイヤーズの圧倒的カリスマ性は自ずと人々の心に伝わり、この世あらざる不気味さが強烈に印象付けられるのだろう。

レクター博士には成れても、誰もマイケル・マイヤーズには成れない。



「奴は病室の壁をじっと見つめながら、尋常でない忍耐力で今夜を待ってたんだ。死がこの町に迫っている」