このレビューはネタバレを含みます
『ゴジラの逆襲』とタイトルにはあるが、初代ゴジラは芹沢博士の生み出したオキシジェンデストロイヤーにより死亡。
今回登場するゴジラは二代目になる。
前作ではなかなか全貌を現さないゴジラにジリジリとさせられたが、今回はかなりあっさりと序盤にその姿を現す。
ただこの登場シーンのカメラワークは秀逸。
下からのアングルでゴジラが何か別の怪獣と戦っている姿を想起させる。
その相手の怪獣は後にゴジラとの名コンビにもなるアンギラス。
ゴジラ一体でも人間の手に負えないのに、今回は二体も登場するのか。
ゴジラとアンギラスは組み合いながら海中へと落ちていくが、いずれこの二体が日本を襲うことは必至だ。
ゴジラ対策のために前作にも登場した山根博士が東京を襲ったゴジラの脅威を語る。
前作の場面もいくつか画面に映し出されるが、短い場面だけでもいかに前作が緊迫感に満ちていて神がかっていたかが分かる。
戦争を経験した者だから作り出せる生々しさが前作にはあったが、二作目はそれほど時間が経っていないのにも関わらず、随分とお気楽な印象を受けた。
自衛隊は大阪の街に上陸しようとするゴジラを照明弾で誘導しようとするのだが、護送中に逃げ出した囚人が事故を起こしてしまい、爆発による炎にゴジラだけでなく、アンギラスまでが引き寄せられてしまう。
灯火管制の元、警察が囚人を護送するだろうか。
随分とご都合主義で、杜撰なシナリオに思えてしまった。
その後、上陸したゴジラとアンギラスは激しい死闘を繰り広げ、大阪の街は火の海となる。
大阪城が崩れ去る場面はかなり印象的だ。
やがてアンギラスはゴジラによって倒され、怒りの収まったゴジラは海へと帰っていく。
怪獣が去った後の焼けただれた街の姿は、意外と描かれなかったりする。
やはり戦争の記憶が生々しい50年代の映画だからこそ描ける世界があると思った。
前作に比べると人々が大分達観しているなと思った。
どれだけ街が焼かれても、必ず復興してみせる。
人の死があまりにも近かった時代だからこその哀愁漂う作品でもあった。
個人的には大阪の街が崩壊した後のドラマの方が面白かった。
やはりこの映画も戦争の記憶と結び付いている。
恋する女性へのプレゼントを親友である月岡の婚約者に相談していた小林が、ゴジラを追撃するために飛び立ちそのまま命を落とす。
月岡も小林の死に落胆する間もなく、ゴジラを葬るために自ら攻撃隊に志願する。
ゴジラシリーズではお馴染みの小泉博や、黒澤組でお馴染みの千秋実に土屋嘉男、
『青い山脈』の若山セツ子など、俳優陣の層も厚く見応えはあった。
志村喬演じる山根博士はもっと見せ場があっても良かったのでは。
最後にゴジラやアンギラスの造形について。
初代ゴジラよりもかなり虚ろな目をしていて、薄気味悪さの増したゴジラ。
しかしアンギラスもそうだが、血が通っているようには見えなかった。
そして初代に比べると圧倒的に小者感が増したゴジラ。
最後は雪崩によって氷の中に閉じ込められるが、いずれ再びゴジラは氷を溶かして表の世界に現れることになる。