ナツミオ

夜の女たちのナツミオのレビュー・感想・評価

夜の女たち(1948年製作の映画)
4.0
WOWOW録画鑑賞

”日没後、この付近で徘徊する女性は闇の女と認め、検挙する場合がありますから、善良な婦女はご注意願います“
〜街中の立て看板

溝口健二監督作品を初鑑賞。

なんという時代⁈
そして立て看板の文言。
“闇の女” = ”夜の女“

終戦直後の混乱期、夜の街娼に身を落とした女たちの悲しい運命を溝口健二監督が厳しい眼差しで直視。
大女優・田中絹代が体当たりで汚れ役に挑んだのも一躍話題を呼んだ問題作、社会派群像ドラマ。

1948年日本作品モノクロ
監督 溝口健二
脚本 依田義賢 
原作 久板栄二郎
音楽 大沢寿人 中沢寿士とM・S・C楽団(演奏)
撮影 杉山公平
出演 田中絹代 高杉早苗 角田富江 永田光男 村田宏寿 浦辺粂子(くめこ) 毛利菊枝 

(WOWOW番組内容より)
戦後の荒廃した大阪。
まだ復員しない夫の帰還を待ち侘びながら、病気の息子を抱えて苦しい生活を送っていた房子(田中)。ところが夫の戦死の悲報が届いたのに続いて、息子も病死。
その後房子は、いかがわしい闇商売をする栗山の秘書兼愛人となる。ところが栗山は、長らく行方知らずだったところを街で偶然再会し、房子と一緒に暮らすようになった妹の夏子(高杉)にまで手をつけてしまう。すっかり絶望した房子は、遂に夜の街娼に身を落とし……。

(WOWOW解説より)
2022年に演出家・長塚圭史が多彩なキャストとスタッフを集めてミュージカル舞台化して話題に。
戦後民主主義を高らかにテーマに謳いあげた「女性の勝利」を皮切りに戦後の溝口映画で相次いで主演を務めて彼の作品になくてはならない存在へと変わりつつあった田中絹代が本作ではなんと、流転の運命の果てに、戦争未亡人から夜の街娼へと身を落とす汚れ役のヒロインに挑んで、体当たりの熱演を披露。
転落した後の彼女がどのようにして画面に登場するかは映画を見てのお楽しみだ。共演は「朱と緑」の高杉早苗。

戦争未亡人の姉と、その妹がたどる波瀾万丈の人生を生々しく描いた社会派群像劇。

映画冒頭の立て看板の文言にビックリする‼️
そして姉・房子(田中)を探して街娼がたむろする夜の街を徘徊する妹・夏子が間違って警察の一斉検挙で病院送りに。
有無を言わさずに検挙される時代。

病院で性病検査を受けさせられ、夏子は罹患と妊娠を告げられる。

病院内での、街娼たちから袋叩きにされる夏子、房子との意外な再会。
姉の変わり様にビックリ‼️
田中絹代の体当たりの演技。
この時代の彼女の作品は初めて観たが、未亡人とその後の汚れ役のギャップが凄い演技‼️
妹・夏子役、高杉早苗も綺麗な女優さん。
引退後、本作でカムバック。
姉妹が時に罵り合いながらも、助け合う姿が胸を打つ。
義理の妹・久美子に墨田富江。映画初出演。
長年おばあさん役で有名な浦辺粂子がポン引きのおばちゃん役で。

この終戦後の殺伐とした大阪を舞台に、2人の姉妹の波瀾万丈な人生を描く。

闇商売の男・栗山(永田)に囲われる房子。そして栗山は妹・夏子にも手を出し、それを知った房子が逆上し、街娼に身を堕とす。

義理の妹・久美子(角田)は、家出し学生の口車に乗せられ、無理矢理酔わされ暴行、所持金も奪われて、挙句に不良少女グループにリンチとみぐるみ剥がされ街娼に落ちていく非情さ。

そんな時代に女性を救済する施設・“婦人ホーム”の存在に一筋の燈が。

終戦直後の大阪市内の実写映像。
まだまだ空襲の爪痕、廃墟が残る街並み。
復興途上の心斎橋、戎橋、大阪駅。

終盤の街娼たちが房子にリンチを加えるシーンの舞台が廃墟となった教会。
空襲でも破壊されずに残ったステンドグラスに描かれた聖母マリアに、溝口監督がフイルムに刻んだ想いが余韻を残す。

男たちの罪と贖罪
女たちの生命力



【忘備録】ネタバレなし
キャスト
大和田房子: 田中絹代
君島夏子:  高杉早苗
大和田久美子:角田富江
栗山謙造:  永田光男
病院長:   村田宏寿
ポン引きのおばさん:浦辺粂子
房子の義母・徳子: 大林梅子
古着屋の女将:   毛利菊江
不良学生・川北清: 青山宏
純血協会の婦人:  槇芙佐子
婦人ホームの院長: 玉島愛造
平田修一:  田中謙三
刑事甲:   加藤貫一
刑事乙:   加藤秀夫
アパートのおばさん:岡田和子
闇の女・安子:   西川寿美
闇の女・和子:   林喜美子
闇の女・竹子:   滝川美津枝
不良少女:     忍美代子
ナツミオ

ナツミオ