ゆず

Kids Return キッズ・リターンのゆずのネタバレレビュー・内容・結末

Kids Return キッズ・リターン(1996年製作の映画)
3.3

このレビューはネタバレを含みます

かなり淡々とした映画だけどそこも評価されてそう。個人的には一本調子なのはあまり好きじゃない。少なくとも本作の雰囲気は暗い。まあ北野映画ってそういうものかもしれないけど。

マサルとシンジ、2人の不良少年のそれぞれの人生が描かれる。
一緒になって始めたボクシング、しかしマサルはすぐに投げ出し、極道に身をやつす。
マサルの挫折の原因であるシンジは、才能を見出されリングに上がるが、先輩ボクサーに悪知恵を吹き込まれ未来をふいにしてしまう。
非常に「わかる」。授業中、ジッとしていることすらできずに遊んでいたマサルが何かを辛抱強く続けるなんてできるわけない。自分が得意なことは「面白く」、不得手なことは「つまらない」、そういう思考回路。まして、格下に見ていたシンジに劣るという事実は耐え難い。
一方、シンジにとってのボクシングは、つまらない日常の中でやっと見つけた打ち込めるものだった。しかし、先輩の甘い言葉でシンジは堕落してしまう。心の弱さから悪魔の囁きに惑わされて人生狂わせてしまうのも非常に「わかる」展開だった。

シンジは同学年のマサルを「マーちゃん」と呼びながらも敬語を使い、何をするにもマサルが先に立ってやる印象がある。
シンジはマサルの悪行についていくだけなのだが、それはシンジの主体性のなさや他者への無関心を表してもいる。
シンジは、マサルがサボるのにまかせてサボり、マサルがカツアゲするのにまかせてカツアゲする。マサルからボクシングを間接的に奪い、彼がヤクザに身を落としても何一つ言わなかったのがシンジである。
本当にヤバイのはシンジの方なのかもしれない。



2/12 キッズ・リターン 録画
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