甘味

泥の河の甘味のレビュー・感想・評価

泥の河(1981年製作の映画)
4.6
大学生の時、研究室のシネフィル教授がたまーに自分のお気に入り映画の上映会をしてたんだけど、告知の貼り紙に本作が書かれていたのをよく覚えている。

宮本輝好きの先生がチョイスするんなら間違いないと思ったし(私が宮本輝ファンになったのも先生の影響)、実際自分の作品が映像化されるのをあまり良く思っていない宮本氏本人も本作だけは認めていると知り、興味を持った。
しかし都合がつかなかったか他事を優先させたか単に忘れてたか理由は思い出せないけど、当時の私は結局泥の河上映会に参加する事は無かった。

それから観るタイミングを完全に逃し、VHSが姿を消してからはレンタルも無くなり…観賞が困難になってしまった今になって無性に観たくて観たくて堪らなくなっていた。
しかし遂に今年の秋、午前十時の映画祭で上映される事になり、狂喜乱舞。
今から楽しみやな〜と胸躍らせていたんだけども、たまたま先日お試しで入会したdtvで視聴出来る事に気付き…かなり迷ったけど、誘惑に負けて秋まで待てず観てしまった。

どうでもいい前置きが長くなり過ぎたな。すみません。

結果、もうめっちゃくちゃ良かった。何回も何回も泣いた。作者が認めるのも納得の大傑作。元々気に入ってる小説と同じぐらい好きって思える映画化作品ってそうそう無い。先生の上映会行かなかった大学時代の自分が憎い…

のぶちゃん、きっちゃん、ぎんこちゃん。子供達みんないい。素朴な演技がとってもいい。
のぶちゃんのお父ちゃんとお母ちゃん。とにかくあったかくて優しくて。子供に向ける視線に心洗われ何度も涙。
加賀まりこ演じるきっちゃんとぎんこのお母ちゃん。初めて登場するシーンは筆舌に尽くしがたい。圧倒的存在感。あまりの美しさに身体が硬直してしまった。

映像も全編にわたって素晴らしく、セピア色の世界が原作のイメージそのままで物凄く感動した。印象的なショット、たくさんあったなぁ…

はー、良い。これは確実に今年のマイ旧作ベスト入りするなー。
劇場で再観賞しようと心に決めた。今から小説読み返して秋の午前十時に備えよう。
甘味

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