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カイロの紫のバラのpicaruのレビュー・感想・評価

カイロの紫のバラ(1985年製作の映画)
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『カイロの紫のバラ』

ああ……
またベスト映画が更新されてしまった……
ウディ・アレン。
『アニー・ホール』、『ハンナとその姉妹』に続き、観るたびに傑作との再会である。

スクリーンから映画スターが飛び出した!

映画ファンなら誰もが一度は夢見たことがあるだろう。
もしかしたら、恋をしてしまったこともあるかもしれない。

そんな憧れを叶えてくれたのは、私たちが愛した映画だった。

ストーリーはロマンティック・コメディ。
夫との生活に疲れきったセシリアは映画館へ『カイロの紫のバラ』を観に行く。
夢中になって繰り返し観ていたら、ある日、映画の主人公・トムがスクリーンから声をかけ、外の世界へ彼女を連れ去ってしまう。

冒険家のトムがすばらしい!!
愛に満ちていて、ヒロインを一途に想う。
映画の世界で過ごしてきたから現実の世界に戸惑い、「映画ではここで車が動くんだが?」とか「世界を創った神様って脚本家のこと?」とか言い出す。めちゃくちゃかわいい(笑)
女の子なら誰もが惚れてしまうね。

ヒロインのセシリアが愛らしい!!
「一度はこんな風に誰かから愛されてみたかった」と語る彼女。
映画を観ているときの表情があまりに美しくてうっとりしてしまう。
落ち込んだ日も夢に舞い上がった日もセシリアは映画を観に行く。
映画はいつも彼女のそばにあって、彼がスクリーンを飛び出す前から、映画は心の中に飛び込んでくれていた。
映画こそ現実で、世界のすべてだった。

「映画館で映画を観たい」
「映画スターに会いたい」
「映画の中で恋をしたい」

ずっとずっと私たちが抱いてきたささやかで、特別な願い。
映画を見つめるセシリアの瞳にそっと託した夢。
映画を観る彼女が眩しかったのは映写の光のせい?
それとも涙のせい?
もしかして夢の魔法のせい?

ロマンス映画の教科書。
ひとつひとつが詩として輝く珠玉のセリフ。
星屑みたいに散りばめられた言葉たちと、言葉で語らせない表現の美しさを両立している。
惚れ惚れする。
もはやロマンスではない。
これは、ロマンスが夢見た恋だ。

《おまけ》
日常を奪われ、映画館に行けない映画ファンのために、今度は映画が飛び出して私たちのもとへやってきてくれたのか?
と考えたら泣けてきちゃった。
もし映画館が再開してまた映画を観に行けるようになったら、一番最初にこの映画を観たい。
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