Sari

溶岩の家のSariのレビュー・感想・評価

溶岩の家(1994年製作の映画)
4.0
2020/11/07 名古屋シネマテーク

舞台はポルトガルの首都リスボンから遠く離れた旧ポルトガル領の島にある溶岩地帯の村カーボ・ヴェルデ。
リスボンの工事現場で足場から落下し昏睡状態に陥った男に故郷カーボ・ヴェルデまで同行の挙句付き添う事になった看護師が、この地の奇妙な風習や共同体と関わりながら閉ざされた過去と向き合う…。

前作『血』は映画史的な芸術作品であったが、本作は対極にあるドキュメンタリー的作品。
冒頭のクローズ・ショットの火山の噴火口から溶岩が流れ出るシーンは異世界に引き込まれるかのよう。
(私の感覚ではヴェルナー・ヘルツォーク監督ほどの狂気ではないものの本作の冒頭には近いものを感じる)
荒々しいカーボ・ヴェルデの圧倒的大自然を前にするとある種の恐怖すら覚えそうなほどだ。
村に暮らす人々の言葉や習慣、気候や風土はこの土地独特の異様さを持ちながら力強い生命力も感じさせる。
看護師を演じるイネス・デ・メディロス(『血』でもヒロインを演じる)が赤いミニ・ワンピース姿で鉱山を闊歩する異世界と融合するかのような、アバンギャルドかつ神秘的な色彩感覚で表現された魅力的な場面が続く。


ポルトガルの歴史的背景や社会情勢に詳しくない(最後なので眠気との戦い)ので一度では理解しきれなかったのだが『血』の直後に観たことでコスタ監督の振れ幅…と言い切れないほどのスケールの広さを知る事が出来たのは収穫と言えよう。
この地をロケーションに選んだ時点で既に映画として面白く、撮影含め準備には苦労をされたようだが、この際ストーリーの詳細は良いとさえ思えてくる。過去の秘密を握るキーマンとして登場するエディット・スコブの起用には、コスタ監督が無類のB級ホラー映画好きと知り納得。
無論『顔のない眼』は傑作ホラーだけれど40年近く経ってもエディットの面影が変わらないのが凄い。
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