このレビューはネタバレを含みます
青山真治の北九州サーガ、『HELPLESS』と『ユリイカ』は2022年の追悼上映でセンチュリーシネマにて鑑賞済み。2024年、早稲田松竹でようやく完走。
冒頭、何言ってるのかほとんど聞き取れないイカつい男たち。強烈な暴の匂いに「ああ、この世界にまた戻ってきた」と思わされ、オープニングテーマのジョニー・サンダースに射抜かれる。
またしても漂流する浅野忠信、手配師や代行運転を経て辿り着いたのは運送屋。流れ者たちを包摂する間宮運送は『夜明けのすべて』の栗田科学のような懐の広さを見せる。しかし物語は安易なハッピーエンドには着地しない。善も悪も無い混ぜに飲み込んでいく母親の執着と業は今まで観てきた映画のなかでもトップクラスに恐ろしい。真っ暗な瞳でこちらを見据える石田えりの怪演に釘付け。運命に翻弄される男たち。"偶然なんてない 出会うべくして出会う"という台詞がすべてを物語っている。
ロケ地が何処もかっこいい。小汚い路地裏、巨きな吊り橋、古びた社屋、無機質な砕石場。オダジョーと二人で見渡すだだっ広い丘は『エリエリ〜』のセッションシーンを連想させる。序盤の北九州コンビの宅飲み長回しも好き。あれだけでもずっと観てられる。最高。